約 3,643,302 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1480.html
「ゆっくり外交の手引き」 ドスまりさが出没するよ!! 虐待というより征伐だよ!! 登場人物の個性が強いかもしれないけど、気にしないでね!! 『この村のリーダーをよんでね!!その人とはなしがしたいよ!!』 直径5メートルを超える巨体。地を震わす声。人間が雨宿りできるほどの大きな黒い帽子。 話には聞いていたが、ついにこの村に来るとは…! ばったり出くわした村人達は、驚きを隠せなかった。 「これが…!」 「ついにこの村にも…!」 「お、俺は村長を呼んでくる!!」 くいっと頬を緩ませるのは、自信の表れ。 力の篭った目は、自分の正しさを確信している証。 力こそ正義。正義こそ力。その口が無言で語るのは、2つの真理。 この世界で知らぬものはいない―――ドスまりさである。 ドスまりさは、村と森の境界にある広場に堂々と鎮座していた。 「ゆっ!ドスまりさ!このむらでもうまくいくといいね!!」 『れいむ!人間にきかれたらまずいよ!!ゆっくりしずかにしててね!』 ドスまりさは、側近であるゆっくりれいむと他に5匹程度のゆっくりを引き連れていた。 れいむとドスまりさがぼそぼそと言葉を交わすが、目の前の村人にすら届いていなかった。 しばらくして、一人の村人が5人の若い男を連れて戻ってきた。 「案内ご苦労。君達は自分の仕事に戻ってください」 「ここからは我々の仕事だ。君達は何も心配しなくていい」 普通の村人とは明らかに違う、清潔感のあるビシッとした服装。 5人は背丈も体格も顔も違うが、彼らは総じて自信ありげな笑みを浮かべている。 ドスまりさの巨体を目にしても、彼らの笑顔は崩れることはなかった。 その中の一人が、一歩前に出てドスまりさを見上げた。 「ほぅ、君が話に聞いていたドスまりさか」 『ゆっ!!まりさはリーダーに話があるんだよ!!ふつうのひととは話をしないよ!!』 ゆっくりという生き物は、相手を見た目で判断する傾向がある。 ドスまりさほどの知能を持っていてもそれは健在で、目の前の若い男が“それ”だとは気づかなかった。 5人の男は互いに顔を見合わせると、示し合わせたかのように一斉に笑い始めた。 「あっははははは!!!」「ふはははははは!!!」 「そうかそうか、ゆっくりは見た目でモノを判断するからなぁ!」 『ゆ!!何がおかしいの!?さっさとリーダーをよんできてね!!時間かせぎはむいみだよ!!』 「ははは!……これは失礼。私こそが、この村の村長である。我々は君達の訪問を歓迎するよ」 “村長”は恭しく頭を下げると、再びドスまりさの顔を見上げた。 そのドスまりさの顔は、疑問と驚きで何とも形容しがたい形に歪んでいる。 今までいくつもの人里を目にしてきたドスまりさにとって、“村長”とは白髪に髭を蓄えた老人というイメージが定着していたのだ。 『ゆ!?あなたが村長なの!?ごめんなさい!!まりさ気づかなかったよ!!』 「いやぁ気づかないのも無理はない。この若さではね、他の村の村長にもよく舐められるものさ」 ドスまりさは、外見で村長ではないと決め付けたことを詫びた。 村長もこういった経験は一度や二度ではないらしく、自嘲気味に苦笑する。 「ふふふ…さて“本題”に入ろうか。君達も、村に観光にやってきたわけではあるまい?」 『ゆ゛っ!!』 鋭い目で側近を含む6匹を見下ろす村長。 ドスまりさは、そんな視線から守るべく6匹を自分の影に隠した。 『ゆぐぐ!!そうだね!まりさも村長さんにお願いしたいことがあるよ!!』 「…お聞きしよう。我々に出来ることなら、全身全霊で協力するよ」 村長だけでなく、彼の側近4人も不敵な笑みを浮かべる。 これで、対峙しているのが人間であれば不信感を抱いて、少しは疑り深くなるものだが… 残念ながら、ドスまりさはとてもゆっくりしたゆっくりだったので、なんら違和感を抱かなかった。 キュウウウウゥゥゥゥ!!! ドスまりさの大きく開かれた口。その中心が強烈な光を放っている。 その発光体はエネルギーを吸収し、どんどん大きくなっていく。 「ゆっくりみていってね!!」 「どすまりさのすばらしさに、おそれおののいてね!!」 「これをみれば、どすまりさにていこうすることがどんなにむいみか、ゆっくりおもいしることになるよ!!」 ドスまりさを守るように、男5人衆の前に立ちはだかる6匹のゆっくり。 ゆっくりの中でも知能が高いらしく、ゆっくりらしからぬ言葉を使っているが…男達は対して驚かなかった。 そして… ズドオオォォォオン!!! ドスまりさの、唯一にして最強の必殺技―――ドススパークが放たれた。 目の前の木々は粉々に粉砕され、ところどころ赤熱している。 その惨状が、ドススパークの恐ろしさを物語っていた。 「今回もやはり―――」 「―――するわけにはいかないか?」 「いつものことながら、威力は―――」 「では、今回も―――」 村長を除く4人の男達は取り留めのない会話を交えるが、ドスまりさの耳には届いていない。 『これでゆっくり理解したよね!!まりさがその気になれば、人間なんていちころだよ!!』 「ふむ、確かに素晴らしい威力だな。人間がこれを受けたら、骨すら残らないだろう」 村長は額の汗を拭いながら、視線を上に向けてドスまりさの顔を見る。 その表情の歪みようから……ドスまりさは、今回も事がうまく進むだろうと確信した。 「それで本題……君達の“お願い”というのは?」 『ゆゆ!!まりさたちのお願いは、人間と村の“不可侵条約”を結ぶことだよ!!』 「ほぅ…詳しく聞かせて頂こうか」 そして、ドスまりさは村長に促されて不可侵条約について説明した。 それをまとめると以下のようになる。 人間はゆっくりを殺してはならない。 人間はゆっくりを攻撃してはならない。 人間はゆっくりの群れにむやみに立ち入ってはならない。 人間はゆっくりの生活を脅かしてはならない。特にゆっくりの巣などを荒らしてはならない。 ゆっくりは人間を殺してはならない。 ゆっくりは人間を攻撃してはならない。 ゆっくりは人間の生活を脅かしてはならない。特に人間の畑などを荒らしてはならない。 条約違反が発覚した場合、違反した側が違反金として食料を相手に渡す。 というものだ。 「なるほど、こちらには“畑を荒らされずに済む”というメリットがあるわけだな。 確かに、ここ最近のゆっくりによる畑荒らしの被害は、無視できないレベルまで拡大している」 『この条約をむすべば、そんなひがいもなくなるよ!!』 この条約は、ゆっくりにとっては命だけでなく生活全般を保障するものだった。 人間にとっては食料の確保以上の利点はないが、かといって条約を結ばないという選択肢はありえなかった。 ドスまりさの、存在である。 『この条約をむすばなかった場合……村長さんなら、どうなるかわかるよね!!』 明言しないが、明らかな脅しだった。 もし条約を結ばなければ、それ相応の手段に出るぞ…というドスまりさの意思表明。 『もう一度言うよ!!まりさがその気になれば、人間だっていちころなんだよ!!』 実際、このドスまりさの群れには、村の人口の5倍のゆっくりがいるという。 ゆっくりの数とドスまりさのパワーで、村の人間を脅迫しているのだ。 『かんがえる時間がひつよう?それならまりさたちは、また明日くるよ!!』 「………いや、その必要はない」 『ゆっ!?』 半分笑いが隠せていないドスまりさは、自信満々で村長に問いかけるが……その返答は意外なものだった。 「いいだろう。すぐに条約締結といこうじゃないか。こういったことはなるべく早いほうがいい」 『でも村長さん!他の人とそうだんしなくていいの!?』 ドスまりさは不審に思っていた。今まで幾つかの村と不可侵条約を結んだ事があったが、いずれの村も決断に数日を要していた。 それ自体は別におかしな事ではない筈なのだが、“別の目的”を持っているドスまりさたちにとって、その決断の早さは不審だった。 「それに関しては問題ない。私は村人に信頼されているから、こういったことも私の一存で決定を下すことができる」 『ゆっ……それなら話がはやいね!!村長さんがゆうしゅうな人で、まりさも嬉しいよ!!』 「では早速始めようか。君、あれの準備を」 若き村長が指示を出すと、一人の男が村の中心地へと走っていった。 「今、署名の準備をさせている。村長である私と、群れのリーダーである君が署名をした瞬間、条約はその翌日から発効する」 『ゆ!!問題ないよ!!でも村長さん、すぐに準備をはじめられるなんてすごいね!!』 「あぁ、今までも幾つかの群れと条約を結んだ事があってね。 君達はいつも同じような条約を結ぼうとするから、条文も既に用意してあるんだよ」 ドスまりさは、さらに不信感を募らせた。 条文が既に用意してある。今までにも他のドスまりさが率いる群れと条約を結んだ事がある。 つまり……条約に慣れているということ。もしかしたら自分達の企みも暴かれてしまうかもしれない!! その瞬間、形容しがたい不安に襲われたドスまりさだったが……それを表に出すわけにはいかない。 目の前には、今もくつくつと不敵な笑みを浮かべている人間達が、自分を見ているのだから。 しばらくして、男が必要な道具一式を持って戻ってきた。 「持ってきました!!」 「ご苦労。さて、まずはドスまりさ、君が条文の内容を確認してくれたまえ」 『ゆっ!!ゆっくり読ませてね!!』 その条文は左右に分かれていて、左にはゆっくりが理解しやすいように条文がひらがなで書かれている。 一方右側は、人間が理解しやすいようにひらがなと漢字を混ぜて記述されている。 『村長さん!!どうして右と左に分かれてるの?まりさは右側をよむことができないよ!!』 「あぁ、人間はひらがなだけだと逆に文章を理解できないんだ。だから右側には人間が理解できる文章で書いてある。 条約締結のためには不可欠な措置だ。ゆっくり理解してくれたまえ」 『ゆゆゆ……しょうがないね!!理解してあげるよ!!』 条約を結ぶためならしょうがない。ドスまりさは渋々受け入れた。 とにかく条約を結んでしまえばこちらのものだ、という考えがドスまりさにはあったのだ。 一時は不安に思ったが、結局のところ自分達の作戦に穴はない。条約を結べばこちらの勝ちだ…!! 『ゆっ!!条文にはもんだいないよ!!つぎは村長さんがよんでね!!』 「ふむ………………よし、問題ないだろう」 その後、条約に関して2,3補足として議論がなされた。 具体的には、お互いの住んでいる場所の地図を作成してお互いに提出すること。 そして、互いは村や群れで十分に条約の周知徹底を行うこと、などである。 そしてついに条約締結の手順に入る。 まず村長が署名し、次にドスまりさが朱肉に舌を押し付け、印を押す。 これで人間とゆっくりの“不可侵条約”は、成立した。 『条約の効き目は、あしたからだよね!!』 「その通り。だが我々は紳士だ。本日この時から、この条約を発効させたいのだが…」 それはドスまりさにとって、願ってもない申し出だった。 群れのゆっくりの安全を保障できる以上に、作戦を成功させられる可能性があがるからだ。 『ゆっ!!いいよ!!それじゃ条約は今から効き目をもつってことでいいね!!』 「それで構わない。ではまた会おう。お互いの平和と繁栄を願っているよ。君、彼らをお送りしろ」 『だいじょうぶだよ!!まりさは強いから、見送りなんていらないよ!! それじゃさようなら!!村長さんの村もゆっくりできるといいね!!条約を破ったら罰則だよ!!忘れないでね!!』 条約締結を果たし、ドスまりさたちは満足げに森へと立ち去っていった。 群れへと帰る途中、側近であるれいむ達がドスまりさに話しかける。 「どすまりさ!!こんかいもうまくいきそうだね!!」 『ゆぅ!そうだね!!これで人間が条約を破ったようにみせかければ、たくさん食べ物がもらえるよ!!』 「ゆぅー!!とてもゆっくりできそうだよ!!」 「ゆっくりできるね!!」「さすがどすまりさだね!!」 つまり、そういうことだ。 ドスまりさが、人間の村と不可侵条約を結ぶ目的は、群れのゆっくりの安全確保だけではない。 人間が条約を破ったようにうまく見せかけて、その証拠を人間に突きつける。 そして人間から多大な量の食料を受け取ろうという目論見が、ドスまりさにはあったのだ。 『ゆぅ…本当は悪いことだけど、みんなをゆっくりさせてあげたいよ!!にんげんがかわいそうだけど…』 「いいんだよ!!れいむたちゆっくりしたいよ!!」 「だからにんげんたちには、ゆっくりぎせいになってもらうんだよ!!それはあたりまえのことだよ!!」 人間が犠牲になるのは当然だ、と言い放つ周りのゆっくりたち。 ドスまりさはそこまでは思っていないが、自分達がゆっくりするためなら外部の犠牲はしょうがないと考えていた。 皆がゆっくりできれば、自分もゆっくりできる。皆が幸せになれば、自分も幸せになれる。 ドスまりさは、群れのために、そして自分のために……人間を陥れることにしたのだ。 『ゆ!早く帰ろうね!!帰ったらみんなに報告するよ!!』 「ゆっ!!そうだね!!かえったらゆっくりしようね!!」 「さくせんがせいこうすればゆっくりできるよ!!」 「みんなでゆっくりしようね!!」 ドスまりさは、心のどこかに突っかかりを感じたが、周りのゆっくりの笑顔を見てそれを忘れ去った。 きっと自分が死んだら地獄に落ちるだろう。それは自覚している。でも綺麗事だけでは、皆をゆっくりさせることができない。 …自分は間違っていない。正しいのだ。皆をゆっくりさせるためだから、これは間違っていない。 自分にそう言い聞かせて、森の奥へと消えていった。 一方、村の中心部。 村長を先頭に、5人の男が村役場へと戻っていく。 「村長。首尾はいかがですか?」 「上々だ。なかなか頭の切れるやつのようだが、所詮はゆっくりだからな」 懐から高級な煙草を取り出し、一本口に咥える。 一番近くにいた男が、促されもしないのにその煙草の先端に火をつけた。 味わうように白い息を吐き出し、村長は周りの男に指示を出した。 「さて、仕事に入ろうか。まずは村内12箇所の掲示板に、今回締結した条約について告示。 その条約から逸脱した行動は取らぬよう、村民に呼びかけるんだ」 「わかりました」 「それと、万が一のために若い男の中から有志を募って、彼らに武器を与えておけ。 武器はゆっくりを殺せる程度で構わん。ドスまりさは……こちらが人数をそろえれば何とでもできる」 「医療班はどうしますか?」 「必要ない。どうせ血は流れん。流れるのは……餡子だけだ」 その言葉が、村長の心の内を表していた。 ドスまりさ同様、村長も条約をバカ正直に守って互いの平和を維持するつもりは毛頭なかった。 それどころか、村長はドスまりさがしようとしている以上の非道を実行しようとしている。 人間とゆっくりは―――結局のところ、互いが互いを欺こうとしているのだ。 「あぁ、それと…ひとつ行事を執り行おうと思うのだが」 「はぁ……この時期にですか?」 花火大会はもう終えたし、村民運動会はもっと先だ。側近の男は不審に思ったが… 「そうだな……行事名は、“饅頭早食い大会”とでもしておくか!」 「ははははははは!!」 「なるほど、それはすばらしい!!」 誰もが村長の真意を理解し、5人は笑いながら村役場へと戻っていった。 翌日。 母れいむと10匹の子ゆっくりからなるゆっくり一家が、村の畑のすぐそばでゆっくりしていた。 「ゆっゆー!!」「ゆっくち~♪」「ゆっきゅちしてりゅよ~♪」 「みんな!!とてもゆっくりしてるね!!おかーさんうれしいよ!!」 森の奥地とは違って、村は日当たりがよく暖かい。ゆっくりにとって、とてもゆっくりできるゆっくりプレイスだ。 今までは人間に殺されることを恐れて、なかなか村の中まで入って来れなかったが… 昨日締結された条約によって、ゆっくりの安全は保障されている。 畑を荒らしたり、人間に迷惑をかけない限り、ゆっくりは村の中の好きなところでゆっくりすることができるのだ。 「ゆ~ん!!おいちそうなたべものがありゅよ!!」 「おちびちゃん!!それはにんげんのものだよ!!たべたらゆっくりできないよ!!」 ゆっくりたちは、昨日のうちに条約の存在を知らされている。 だから、畑を荒らしたら条約違反の罰則によってゆっくりできなくなることを、全員が知っているのだ。 「お、ゆっくりじゃないか」 そこを、畑仕事の道具を担いだ一人の男が通りがかった。 今までは命を脅かす危険な存在だったが、今は条約が守ってくれる。 無防備にも、ゆっくり一家は穏やかな笑顔で男に挨拶した。 「おにーさん!!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくちしていってね!!」「おしごとがんばっちぇね!!」 友好的な言葉をかけるゆっくり一家。それを聞いて気をよくした男は、一家に歩み寄っていく。 「ほー、うまそうだな!」 手近な子ゆっくりを一匹手にとって、全身を眺める男。 「ゆぎゃああああああ!!!だべないでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」 「おにいさん!!あかちゃんをはなしてあげてね!!それいじょうは“じょうやくいはん”だよ!!」 「条約違反?何言ってんだか。いつも搾取されるだけの分際で」 男はまともに取り合わず、そのまま子ゆっくりに齧り付いた。 「ゆっぎゃああああおあおrがえrがおrいだいいだいいだいいだいいいいいいいいいぃい!!??」 「あがぢゃんをだべるなあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!どすにいいづけるぞお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉ!!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり(笑)」 子ゆっくり一匹を食べ終えて満足した男は、一家が何を言ってもまともに聞かないで畑へと向かってしまった。 取り残された一家を襲うのは、人間に対する怒りと憎しみ。 「どうじでええぇえぇえぇぇぇぇ!!!じょうやぐがあるのにいいいいいいいいいいっぃぃぃぃぃいいぃぃ!!!」 「こうなっだらどずにいっで、なんどがじでもらうしかないよ!!」 「にんげんはやくそくをやぶったよ!!どすにこらしめてもらおうね!!」 「にんげんはゆっくりこうかいしてね!!!」 人間と共存してゆっくりできると思っていた一家は、僅か10分でその期待を裏切られた。 残った子供達を連れて一目散に森へと向かうゆっくりたち。目の前で起こったことを、余すことなくドスに報告しよう! そして、自分の子供を食べた憎き人間達を、思う存分懲らしめてもらおう!! 逃げ帰ってきたゆっくりから報告を受けたドスまりさは、側近だけを集めて会議を開いた。 「まさか、こんなにはやくゆっくりできなくなるなんて、おもってなかったよ!!」 「でもドス!!うまくすればさくせんをはやくすすめることができるよ!!」 側近の話を聞いて、ドスまりさも決意した。 『ゆゆっ!!これは立派な条約違反だよ!!人間は違反金をはらうひつようがあるよ!! さっそく人間の村に行くよ!!みんなで違反金の食べ物をもらいにいこうね!!』 そうと決まれば話は早かった。 予想していた成り行きとは違うが、現実に人間が条約違反を犯したのである。違反金を受け取るのは当然の権利だ。 ドスまりさの指示で、若く元気なゆっくりが広場に集まる。 『人間は不可侵条約をやぶったよ!!だからこれから違反金をとりにいくよ!!』 「にんげんはゆっくりできないんだね!!」 「やっぱりにんげんはだめだね!!」 「れいむたちのほうがゆっくりしてるね!!」 『みんな!!まりさにゆっくりついてきてね!!』 ゆっくりの軍団は、人間から食料を受け取るべくゆっくりと村へ跳ねていった。 これだけのゆっくりが集まれば、人間が何か文句を言っても数の暴力で対処する事が出来る。 ドスまりさは、何もかもがうまくいくこの状況を嬉しく思い……何の疑いも抱かなかった。 続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1436.html
流れを読まずゆっくり阿求。 途中まで見たら、大体オチがわかる仕様になっております。 ここは永遠亭。机をはさみ、向かい合う永琳と阿求。心なしか、永琳の目には疲れが見える。 「私は考えた。どうすればAQN症候群を治せるのか・・・・。 ゆっちゅりーを育てさせれば、AQN症候群ゆっちゅりーを生み出すし、 東風谷早苗に相談したら、トラウマを植えつけられて神様が怒鳴り込んで来るし、 上白沢慧音に至っては、廃人になりかけて入院中。 そこで永遠亭の総力を結集して作ったのがこれ!」 机の上におかれたのは、1匹のゆっくり。 「あきゅー!」 「これを育てることが、今の貴方にできる善行y」 フォン、グシャ。 皆まで聞かず、阿求はゆっくり阿求にげんのうを振り下ろしていた。 「別に、自分のゆっくりだからといって、いいえ、自分のゆっくりだからこそ、殺し甲斐があると思いませんか?」 断じる阿求。 対するは笑みを浮かべる永琳。 「ふふふ・・・かかったわね」 げんのうの下で、むくむくと蠢く、ゆっくり阿求だった餡子の塊。 それが見る見るうちに、形作り、元のゆっくり阿求となった。 「あやー!」 「これは・・・!」 フォン、ボヨン。 再度げんのうを振り下ろす阿求・・・しかし、げんのうに伝わるのは、先ほどとは全く違う感触だった。 「これぞ、ゆっくり阿求の特性・・『⑨の試練』 ゆっくり阿求は9回殺さなければならない上に、一度食らった攻撃は二度と通じないのよ! ふふ、確認されている限り、鈍器による撲殺、針による刺殺、素手による殴殺・・・それぐらいかしら? 特殊な戦闘能力を持たない貴方には、これ以上ゆっくり阿求を殺し切ることは出来ないわ!!」 勝ち誇る永琳。 それを聞き、阿求は一言だけ呟いた。 「稗田家なめんな」 打潰す饅頭『ナインライブズゲンノウワークス』 背中を見せる程引き絞った特異な構え・・・それより繰り出される一閃九打の絶技によって、ゆっくり阿求はあっさり9回殺された。オーバーキルである。 あまりのショックに永琳は9日間寝込んだ。 月廚?ふぁて?なんのことです? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/432.html
何処とも知れない場所にある、誰からの干渉も受ける事が無い建物。 その建物の中は時間の流れすら外とは違っており、いつから建っているのか、誰が建てたのか、 どのような目的で建てられたのかすら不明であった。ただ、建物の中には何百人もの人間が住んでいた形跡だけがある。 生きるのに必要な物は全て建物の中にあった。水も電気もガスも通っており、食料は新鮮な物がいくらでも貯蔵庫にあった。 服は利用者にぴったりの物がクローゼットに用意されており、ベッドメイキングもいつの間にか整っている。 街からそう離れていない場所に建っているにも関わらず誰も近寄らないこの怪しい建物を、 たまたま迷い込んだ男は大変気に入った。彼の欲望を満たすには、この建物はぴったりだった。 建物の近くには広場があり、いつでもあらゆる種類のゆっくりを見つける事が出来た。 その点こそが彼がそれなりに幸福だった生活を捨ててまでこの建物に移住した決定的な理由だった。 早速ナタは最初の『恋人』―――眠っているゆっくりれいむを捕まえてきて建物内に連れ込んだ。 「ゆ!!ここはどこ!!?みんなどこにいったの!!?」 れいむが目を覚ましたのは、建物の中の一室だった。 「やあ、おはようれいむ。ここは僕の家だよ。ゆっくりしていってくれ」 「わかったよ!!!ありがとうおにいさん!!!ゆっくりしていくからね!!!」 「どういたしまして。それじゃあ早速ゆっくりしようか」 「ゆっ?」 体を傾げるれいむにゆっくりと歩み寄り、その体を抱え上げて部屋にあるベッドまで連れて行く。 「ゆ!!ふかふかだよ!!!ゆっくりできるね!!!」 「ああ、そうだねれいむ。可愛いよ……」 そう言うと男は突然れいむにキスをした。 「んむっ!んむむむむむむ……!!」 れいむは突然の事に目を白黒させ、体全体を揺すって抵抗している。 だが、仔犬にも劣る運動能力のれいむがどんなに暴れても男の行為を止める事は到底適わない。 「んむーっ!!んむーっ!!っぷは!!いきなりなにするの!!ゆっくりやめてね!!!」 「ふふふ……そうやって抵抗して見せるのも可愛いよれいむ。もっと抵抗して鳴いて見せてくれ」 一分ほどで口を離し、れいむの耳元(?)でそう囁くと、今度はれいむの体全体をゆっくりを手で丹念に撫で回していく。 「ゆーっ!!きもちわるいよ!!ゆっくりはなしてね!!!」 「もう離さないよれいむ。ここは君と僕が愛を語らう部屋なんだからさぁ」 「やめてよおおおおお!!!もうやだおうちかえる!!!おにいさんとはゆっくりできないよ!!!」 「何て可愛く鳴くんだれいむ。ここを触るとどう鳴くのかな?」 恍惚とした表情でそう言うと、男はれいむの口よりやや下辺りを揉み始めた。 「ああ、柔らかい……れいむ、君のここは柔らかくて弾力があって最高の揉み心地だよ」 「そんなこといってもゆるしてあげないよ!!!きもちわるいからはやくはなしてね!!!」 「まあそう言わずに」 「さっさとはなし……んむ!!んーっ!んーっ!!」 顎を揉みながら再びれいむに口付ける。今度は口内に舌を差し込み、舐め回している。 「んむむむむむー!!ん゛ー!ん゛ー!!」 れいむは男の舌を押し出そうと抵抗するが、男の舌はその動きに合わせて絡みつき、口内を蹂躙していく。 5分ほど口内の戦いが続いた頃、れいむの抵抗が弱くなり、目が空ろになって小さく痙攣し始めて漸く男は口を離す。 「もう体力が持たないか……仕方ない、本当はもっとゆっくりしたかったけど、今日はこの位でやめておくよ」 「ゆっ……ゆっ……」 「聞こえてないのかな?まあいいや。食事はそこに置いておくから。ゆっくりしていってね!」 それだけ言って男はさっさと部屋を後にする。残されたれいむは一時間ほどで調子を取り戻し、床に置かれた食事を食べた。 「やあれいむ。ゆっくりしてるかい?」 翌朝男がれいむの部屋に入ると、れいむは部屋の隅から男を睨んでいた。 「ゆっ……ゆっくりできないよ!!おにいさんとはゆっくりできないよ!!はやくここからだしてね!!!」 「そうかそうか。まあその内出してあげるよ。じゃあ朝食の前にゆっくりしようか」 「ゆっ!!やめてはなして!!ゆっくりさせてよ!!!」 「させてやるとも。そんなに急かすなんて可愛い奴め」 そう言って男はれいむの口を塞ぐ。今度は初っ端から舌を差し込み、撫で回している。 「んむむむー!!んー!んんー!!むー!!」 前日の事を覚えているのか、より激しく抵抗するれいむ。 男の舌を噛み切ろうとしているが、顎の力が弱く歯も無いれいむに噛まれた所で、男にとっては何とも無いようだ。 いや、むしろ気持ち良さそうに目を細めている。そうしたねっとりとしたキスの後で、男は言う。 「ふぅっ……二日目でもう積極的になるなんて、れいむは本当に可愛いなぁ」 「ちがうもん!!おにいさんなんてきらいだもん!!ゆっくりはなしてね!!!」 「またまたそんな事言って。そら、今度はここだ」 そう言ってれいむを仰向けにし、自分は寝そべってれいむの体の底を舐め始める。 「ゆふぅ!!?や、やめておにいさん!!ゆっくりやめてね!!!きもちわるいよ!!!」 「れいむの底とても美味しいなりぃ」 そう言いながらレロレロと夢中でれいむの底を舐めほぐす。唾液で底がふやけてきたのを確認すると、 「じゃあそろそろ指行ってみようか」 「ゆぐぐぐ!!?やめてえええ!!はなしてえええ!!!」」 唾液でほぐれた底を指が数往復して、ゆっくりと指を差し込んだ。 しっかりと濡れて弾力が増しているおかげで皮が破れる事も無く、体内に向かってズブズブと沈んでいく。 その感触を指で楽しみながら、少しずつ体内に指を埋め込んでいく。 「ほら、分かるかいれいむ?人差し指が根元まで埋まったよ」 「い゛だい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!ぬ゛い゛でぐだざい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 「ああ分かったよ。ゆっくりと抜くからね」 言葉通りにゆっくりと指を引き抜き始める。指が動く度に 「ゆ゛っ!!!い゛ぎっ!!!ぐっ!!!」 と激しく吼えるがお構い無しだ。そして中ほどまで指を抜いたかと思うと、穴周辺を舐めながらまた差し込む。 「ゆ゛ぎぎぎぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!ぬ゛い゛で!!ぬ゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 「そう焦るなよ。力抜かないと余計に痛い……ん、もう危ないか」 そう呟くと、男は一気に指を引き抜いた。それまでの丁寧な気遣いのようなものは微塵も見られない手つきだ。 「っっっっっ!!!!ゆ゛ぎぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 白目を剥いて絶叫すると、そのままコロリと転がって動かなくなる。 完全に意識を失っており、時々ビクリと痙攣して声を漏らす。 「じゃあ、朝食は昨日と同じように置いておくからね。また明日。ゆっくり休んでね!」 失神したれいむをそのままにして部屋を出る男。その人差し指には赤みの強い餡子がべっとりと付着していた。 「おっはようさんれいむ!ゆっくりしてるか~い!?」 妙にテンション高めな男が部屋に入ると、れいむはぼんやりとした目でのろのろと男の方を向く。 前日の食事は半分以上残っていた。 「駄目じゃないかれいむ、ちゃんと食べないと。好き嫌いするとゆっくりできないぞ?」 「……れいむ、おうち、かえりたいよ……おうちにかえしてよ……」 「あはは、何言ってるんだいれいむ。ここが君のお家だろ?冗談が下手なんだなぁれいむは」 「ちがうよ……ここは、ゆっくりできないよ……おうちじゃないよ……」 「ああそうか。僕が来るのが遅かったからそんな意地悪を言うんだね?ごめんよれいむ。今日からは夜も来るよ」 「ちが……ちがうよ……」 呟くれいむの言葉を無視して、男はれいむを抱きかかえる。 「とりあえずご飯を食べないと。ほら、食べさせてあげるから」 「やめて!ちゅーはいやだ!ちゅーはいやだよお!!はなして!!」 「ああ何だ。思ったより元気じゃないか。これならちゃんと食べればまたゆっくりできるね」 安心した男は皿に盛られているエサを口に含み、よく咀嚼してれいむの口に流し込む。 「う゛ぶっ!!……ぶぶぶぶぶぶぶっ!!!」 「んっ……ふっふいはへへいっへへ」 嫌がるれいむの口に強引に食べ物を入れ、舌で押し込んで無理矢理飲み込ませる。 それを数回繰り返して皿を空にした。 「げほっ!!ごっほっ!!おええええええええっほ!!」 「はいれいむ、ご馳走様は?」 「ぉえっ!えっ!……はぁっはぁっ……」 「こらこら。ご馳走様を言わないと駄目じゃないかれいむ?」 男が射抜くような目でれいむを見つめると、怯えたように 「ご……ごちそう……さまで…した」 「はいよく言えました。ああ本当にれいむ可愛いよれいむ!今日もゆっくりしようね!!」 そう叫んでれいむを抱きしめ、ベッドにダイブする。 「い、いやだ……いやだよおおおおおおおお!!!もういたいのやだ!!気持ちわるいのやだああああああああ!!!」 「大丈夫大丈夫。気持ち悪くなんかないって」 「あああああああああ!!!やめてください!!!はなしてくださいいいいいいいいいいいいい!!!」 「そんなに怖がらなくても平気だよ。いつもみたいに優しくするからさ」 「やめてええええええええええええ!!ゆっくりさせてくださいいいいいいいいいいいい!!!」 「うーん、これはちょっとおしおきしないと駄目かもなぁ」 泣き叫んで抵抗するれいむを押さえ込み、口を口で塞ぎつつ体の底を指で擦る。その動きは前日よりも大分激しい。 「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」 充血した目を見開いて泣き叫ぶれいむ。その叫び声は男の口の中に消えていったが、涙はベッドを激しく濡らした。 暫くすると、体の底からじっとりとした体液が滲み出てきた。男はそれを確認すると、口を離して 「ほられいむ。気持ち悪くなんてなかっただろ?」 「ひっぐ……うっぐ……!ゆ゛っぐり゛……でぎな゛い゛よ゛お゛……!!」 「ああごめんごめん。待っててな今ゆっくりさせてあげるから」 そう言って、指を体の底に沈める。前日よりも幾分スムーズに沈み込んだ。 「ほら分かるかれいむ?中まで湿ってるよ。昨日よりもっとゆっくりできてるだろ?」 「やだやだやだああああああああ!!!い゛だい゛!!ぬ゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「そんな事無いだろう。まあいいか。その内正直になるだろう」 一人で納得して指を抜き差しする。前日のような赤っぽい餡子の代わりに、粘性の高い液体が指に付着している。 「ほられいむれいむ。交尾してる訳でもないのにこんなになったぞ。やっぱりゆっくりできてるじゃないか」 「でぎでな゛い゛……じぇん゛じぇん゛ゆ゛っぐり゛でぎでな゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「そうかい?ああそうか。これじゃ物足りないのか。よし分かった。それじゃこいつを使えば……」 男は一旦れいむから離れ、下穿きを降ろした。 れいむは始めて見たそれに対して普通のゆっくりの様に好奇心を示さずに、ただ震え上がった。 「はいそれじゃいくよ。力抜いた方がゆっくりできるよ」 「やべでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!ゆるじでぐださい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 「そーれっ」 「…………………………………………………………………………………………………………っっっっっっ!!!!」 掛け声と共に底に開いている穴に一気にそれを沈めた。 れいむは全身を仰け反らせて硬直させ、声も出せずに完全に白目を剥いて涎と涙を垂れ流している。 「っはあ……れいむって見た目通り小さくて柔らかで弾力があるんだな。それに温かい。最高だよれいむ」 「…………ぎゅっ…………がっ…………ごぉぉっ………………ぶっぐ………………!!」 男は声にならない呻き声を上げるれいむを見て満足そうな笑みを浮かべる。そして 「それじゃそろそろ動くよ。ゆっ、くりっ、してっ、いって、ねっ!」 「ぎゅっ!!がっ!!ゆ゛っ!!ばっ!!びょっ!!おごっ!!」 独特の掛け声を上げながらリズムよく腰を前後させる。れいむは半ば意識が失せた状態で声を上げ続けた。 「ゆっ、くり、くりくり、くりっくりっと。そろそろ出るよー。そーれケフィア」 そう言った直後、れいむの体が激しく痙攣し出す。声も出さずに凄まじい勢いで痙攣し続ける。 やがて目や口や底に開いた穴からどぷどぷと餡子が漏れ出る。 「おっほ!自分から動くなんてやっぱり積極的だなれいむ!ゆっくりしてくれて嬉しいよ!そらおかわり!」 振動に刺激され更にケフィアを放出する。痙攣はその激しさを増し、餡子が漏れ出る勢いも増大している。 一分ほど経過すると、びちゃびちゃと零れ落ちていた餡子は収まり、ぺらぺらの皮になったれいむと男だけが残った。 零れ落ちた餡子からは湯気が立ち上っている。 「あーあ。ゆっくりし過ぎて壊れちゃったか。後で補充しておこう。っとその前に飯にしよう」 シーツで適当に体を拭き、汚れもそのままに服を着てさっさと部屋を出る。 掃除などしなくとも、次にこの部屋に入る頃には綺麗に片付いているので何も問題は無い。 ふと耳を澄ますと、どこかの部屋でゆっくりが大声で泣き叫びドアを叩く音が聞こえる。 男はニヤリと笑い早く食って行ってあげないと、と呟いて早足に食堂へ向かった。 数十匹のゆっくり達以外に、この館の中に住む者は居ない。誰も彼らの邪魔をしない。 ここは彼とゆっくり達の閉ざされた楽園。理想の箱庭。至高のゆっくりハウスなのだ。 ENDING No.1 -NORMAL END- 作:ミコスリ=ハン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/484.html
今晩の夕食は魚にしよう。 男はそう思い、釣竿と魚を入れるたもと網を持って川に来ていた。 まだ夏になったばかりだが気温は高く、また魚は人を見つけると隠れてしまうので、木陰に隠れて糸を垂らす。 いっぱい釣れたら里で売ってもいいなと気楽に釣りを始めた。 釣りを始めてしばらくが経った。太陽もだいぶ移動している。 釣果は0。まったくと言って釣れていなかった。 餌が悪いんだろうか、と男はいろいろな餌を試してみたがどれにも魚は食いついてこなかった。 もはやあきらめたように木陰に横になる。川を見ながら時間を潰していると近くの草むらがガサゴソと音をたて、ゆっくりが現れた。 ゆっくりはゆっくりまりさと呼ばれる種類で、大きいのが1匹、中くらいのが2匹、小さいのが1匹。 おそらく家族だろう。男はそう思い暇つぶしもかねて様子を見ていた。 やがて川に到着したゆっくりたちは思い思いに水を飲みだした。 「ゆ~、つめたくておいしいー!」 「ゆっくりのむよ!ゆっくりまってね!」 「ゆっ!ゆっ!」 「みずにおちないようにね!あとあまりのみすぎないでね!」 勢いよく水を飲む子供達に親ゆっくりはやさしく注意をしていく。 親ゆっくりは真っ先に水を飲み、その後は子供達の後ろに回っていた。 子供を置いて先に飲むとは酷い親だと思ったが、どうやら水が安全か確かめたらしい。 今も、後ろに回っているのは子供達が水に落ちないように掴んでいるためだった。 やはりゆっくりと言えども子供は守るんだな。 男は知り合いに平気で見捨てる親ゆっくりの話を聞いていたので親まりさの行動に若干驚いたが、 子供を守る親が普通だと思い直し、ゆっくりの話に耳を傾けた。 「みんなそろそろあつまってね!」 「ゆっくりあつまるよ!みんなおねーちゃんについてきてね!」 「おねーちゃんまってー!」「ゆー!」 親の声に真っ先に反応した一番早く生まれたであろう姉ゆっくりがまだ水を飲んでいる妹ゆっくりと、赤ちゃんゆっくりを連れて親の前に集まる。 「ゆ!おねーちゃんはさすがだね!おかーさんうれしいよ!」 「まりさはおねーちゃんだからね!いもうとたちをたすけるよ!」 「おねーちゃんかっこいー!」「ゆゆー!」 「じゃあかわをわたるほうほうをおしえるからゆっくりきいてね!」 「「ゆっくりきくよ!」」「ゆっ!」 今なんと言った。川を渡るだと!? ゆっくりは泳げない。だから潰す以外にも池や用水路に落として殺す。 水の中に入ったゆっくりは必死に出ようとするが泳げないのでどんどん沈んでいく。 やがて体力のなくなったゆっくりは苦しみながら死に、死体は溶けて飾りだけが浮いてくる。 里で捕まえたゆっくりを一匹一匹潰すのは面倒なので最近はゆっくり用に作った池に放り込んで殺すのが里の人の常識となっていた。 男も今まで捕まえたゆっくりを池に捨てたことがあるのでゆっくりが水に浮かないことも知っていた。 そのゆっくりが川を渡ると言うではないか。 釣りに来ていた川は流れがほとんどないような場所で流れに流されるようなことはないだろう。 しかし深さは1mはあるので一度落ちるとゆっくりでは助からないだろう、池のように沈む前に魚の餌になって消える運命が待っている。 男は親ゆっくりの話を詳しく聞くため、ゆっくり親子に近づいた。まりさ種は警戒心が強いと聞いていたので慎重に物陰に隠れて聞き耳をたてる。 「まずはおかーさんがやってみるからね!しっかりみているんだよ!」 「ゆっくりみてるよ!おかーさんがんばってね!」 親ゆっくりがまず手本を見せるようだ。子供たちは飛び跳ねながら応援している。 すると親ゆっくりは自分の帽子を外した。すると帽子の中から木の棒が出てくる。 「みんなすでつくったきはわすれてないよね?!」 「うん!わすれてないよ!ちゃんともってきたよ!」 そういって子供達も親に習い帽子を外し、中から木の棒を取り出す。 木の棒は片端は細く、葉型が付いているので細い方を咥えて使うのだろう。もう片方は平たくなっておりまるでボートのオールのようであった。 ゆっくりが道具を使うことに驚いたが里で見つけたゆっくりたちは石を投げつけたり穴を畑に張り巡らしたロープを引っ張ったり外したりしていた。 ゆっくりの中で頭のよい方のまりさなら使ってもおかしくないだろう。 男はそう納得し、観察を続ける。 「まずはぼうしをみずにうかべるよ!なかにみずがはいらなようにきをつけてね!」 そう言って帽子の天井部分が底になるように水にいれた。帽子は防水加工しているらしく、水がしみこまずにぷかぷかと浮く。 親は帽子が流れないように木の棒で抑えながら、 「ぼうしがながれちゃうとたいへんだからね!きでしっかりおさえてね!」 「ゆ!わかったよ!ぜったいぼうしをながさないよ!」 「ならみんなもやってみてね!あかちゃんはこっちにきてやってね!」 親ゆっくりの注意を聞いて子供達も帽子を浮かべ始める。赤ちゃんゆっくりはまだ不安と判断したのか親ゆっくりがいっしょに抑えてあげていた。 「うかんだらぼうしにゆっくりのってね!ぴったりとはいるようにのるんだよ!」 「ゆっくりがんばるよー!」「「ゆー!」」 「すきまがあるとみずがはいってあぶないしにおうからね!」 慎重に帽子に乗る親ゆっくり、すっぽり入るとゆっくりの重みで帽子の鍔の部分が浮き上がり、水が入らないようになる。 器用に浮いた親ゆっくりは浮いた生首のようで気持ち悪かった。 「ゆ!ゆゆっ!」 「みずこわいよおおお!」 「おかーさんがささえてあげるからがんばってね!」 「ゆー!できたよ!ゆっくりできた!」 「まりさもできたー!」 水がやはり怖いのかなかなか乗れなかった子供達だが、親ゆっくりの手助けで無事乗れたようだ。 一番手間取った赤ちゃんゆっくりは親が咥えて子供達が押さえる帽子に載せることで浮かぶことができた。 「すごいよ!みずのなかがみえるよ!」 「あ、おさかなさんだー!」 「ゆっゆっゆ~」 「きをつかえばゆっくりいどうできるからね!こうやるんだよ!」 「おかーさんすごーい!」 「まりさもやってみるよ!」 「ゆー!!」 親に教えてもらいながらやがて木のオールで起用に動くゆっくり達 水に浮かんだ状態はゆっくりにはゆっくりしやすい条件のようだった。 男ははしゃぎまわるゆっくりたちを見て、面白いおもちゃだと思った。これはしばらく退屈しないですむなぁと。 急いで寝ていた場所にもどり釣り糸と針を用意する。もどるとゆっくり家族は向こう岸に行っておいしいものを食べようということを話していた。 ゆっくり達が向こう岸に行こうと男に背中を向け漕ぎ出す。その速さは名に違わず非常にゆっくりで追いつくのは簡単だった。 男はゆっくりの後ろから帽子に針を引っ掛けていく。4匹すべてに引っ掛けるとまた岩陰に隠れた。 針には釣り糸が付いており、ゆっくりが向こう岸に進むごとに流れていく糸を男は注意深く持ってゆっくりと遊びだした。 「ゆっくりすすんでいこうね!」 「ゆっくりすすむよー!」「ゆー!」 「むこうにはなにがあるの?」 「おいしいものがいっぱいあるよ!れーむやぱちゅりーはわたれないからわたしたちのものだよ!」 「ありすは?ありすはいないの?」 「ありすもいないよ!だからこわがらなくてもだいじょうぶだよ!」 「ありすいないのならだいじょうぶだね!」「ゆっ!」 「もしありすにおそわれたらこうやってにげるといいよ!ありすはかわをわたれないからね!」 「きははだみはなさずもっていてね!なくしたらいってくれたらまたつくるよ!」 「おかーさんありがと!でもこんどはじぶんでつくりたいな!」 「まりさも、まりさもつくる!」「ゆゆゆ!」 「じゃあこんどはきのつくりかたおしえてあげるよ!」 「「おかーさんありがとー!」」「ゆぅ~!」 「おかーさんなにかへんだよ!むこうまでいけないよ!」 「もうちょっとだよ!がんばってね!」 「もうつかれたー!ゆっくりしたいよ!」「ゆぅぅぅぅ」 「がんばってこげばすぐにつくよ!がんばってね!」 「ぜんぜんすすまないよー!」 親まりさは子供達が口を使い上手く漕げているのでとてもうれしかった。赤ちゃんにはまだ早かったがおねーちゃんが助けてあげているので大丈夫だろう。 早く向こう岸についてみんなでおいしいものを食べよう。向こうにはありすもいないから子供達も元気に跳ね回ることが出来る。 木の棒の作り方も教えないといけない。向こう岸にはいい木がいっぱいあるからもって帰ろう。 親まりさの頭はもう向こう岸について楽しむことでいっぱいだった。しかし、漕げども漕げども向こう岸に着かない。 何回もわたったことがある親まりさはおかしいと思いながらも、子供達と一緒だからと思い、子供達を励ましながら懸命にこいだ。 ゆっくりは水に弱い。 帽子に乗っているうちは安全だけども、帽子から落ちたら助からない。もし波がきたら親も子供もまとめて沈んでしまうだろう。 早く向こう岸に渡りたいと思いながら懸命に漕ぐ。しかしがんばってもがんばっても向こうに着かない。 「どゔじでえ゙え゙え゙え゙え゙え゙!」 「お゙がーじゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!」 とうとう疲れたのか漕ぐのを止めて休憩をしだした。早く陸に上がりたいがもう体力がない。子供達も限界だ。 水の上は怖いが、今はありすもいないのでゆっくり出来るだろう。 ゆっくりたちは離れないように木の棒で支えあいながら眠った。 男はそんな様子を岩に座ってみていた。手には4匹につないだ糸がある。 ゆっくりたちがなかなか向こう岸に付けなかったのはこの男が糸を引っ張っていたせいだ。 男はゆっくりが進む力より少しだけ弱く糸を引いた。引きすぎては気づかれる可能性があるからだ。 男がゆっくりが進む力よりすこし弱い力で引くのでゆっくりは自分が上手く漕げてないから遅く見えるだろうという考えだった。 近すぎると戻られたり、気づかれるかもしれないと思ったので引き始めたのは川の真ん中。 男のおかげでゆっくりたちは川の真ん中の辺りで動きがゆっくりになった。 懸命に漕ぐゆっくりの姿や、なぜ向こう岸につかないのかと騒ぐ子供にそれをなだめる親、一つ一つの行動が面白く時間がたつのを忘れてしまった。 男はまだまだ物足りなく、動かなくなったゆっくりが動き出すのを待つ。 それからしばらく経ったがゆっくりが動き出す気配がない。 気になった男はゆっくりに近い岩に移動する。するとゆっくりたちは寝ているではないか。 これでは楽しめない。俺はまだまだ楽しみたいのに。 男は糸の一つを引き始めた。 「ゆっ?ゆゆゆっ!」 「うるさいよ、ゆっくりできないよ」 「ゆ゙ゔゔゔゔゔ!!」 疲れて寝ていると赤ちゃんゆっくりが騒ぎ出した。姉ゆっくりはまだ寝たりないのか赤ちゃんゆっくりに注意する。 親まりさはその悲鳴に何か危険なものを感じたのか目を覚まし、赤ちゃんを探す。そして、 「い゙や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!ま゙り゙ざのあ゙がぢゃん゙ん゙ん゙ん゙!!」 赤ちゃんゆっくりは先ほどまで一番近くにいたのに今はだいぶ離れてしまっていた。いまだ少しずつ離れていく。 親まりさはすぐに理解した。赤ちゃんが流されている。 「まっててね!すぐおいつくからね!」 「「ゆっくりまっててね!」」 先ほどの悲鳴に気づいたのか子供達も後ろから追いかけてきていた。 しかし、つい先ほど覚えたばかりの子供と熟練した親のオール捌きには明確な差があり、子供達はどんどん放されていく。 親ゆっくりは置いていかれる子供達のことも心配だったが、待っていると赤ちゃんが流されてしまう。 赤ちゃんを優先するべきと判断した親まりさは先ほどまでの疲れを見せないオール捌きで赤ちゃんに追いついていった。 親まりさは赤ちゃんゆっくりを追いかけ上流に上っていった。 男は上流に向かって歩いていく。手には糸。赤ちゃんゆっくりが上流に流れていくのはもちろんこの男の仕業である。 赤ちゃんゆっくりの糸と親と子供達の糸を操りながら男は上流に向かっていった。 赤ちゃんゆっくりに親ゆっくりが追いつこうとすると引く力を強める。離れると親ゆっくりは追いつこうとがんばる。 まだ気づかないのか。いい加減上流に行っていることか赤ちゃんが引っ張られていることに気づかないのかと、親ゆっくりを見るがどうやら気づいていない。 子供達などもう口では助けるよなどと話しているが引っ張っているのは男である。 親ゆっくりに声援を送っているが自分達はのんびりと休んでいるのを見て、置いていこうかとも思ったが後々取りに帰るのが面倒なのでしょうがなく引っ張っていた。 子供達の声援によって一時的に早くなる親ゆっくりのこっけいな姿を見ながら、岩に糸を引っ掛けないように注意して山を登っていった。 「「おかーさん!!」」 子ゆっくりの叫び声でところどころにある岩に注意がいっていた男が親ゆっくりをみる。 親ゆっくりは餡子をはきながら息も絶え絶えに「ゆ、ゆっぐりしでいって、ね・・・」といいながら赤ちゃんを追いかけていた。 そんな状態で赤ちゃんを追いかけ続けるのは母親の愛か。とにかくもう潮時だろう。 男はそう思い赤ちゃんゆっくりを引くのを止めた。赤ちゃんゆっくりの動きが止まる。 「あ゙い゙だがっだよ゙お゙お゙お゙お゙お゜お゜!!」 「おがーじゃああん!」 「ゆっ!しゃべれるようになったんだね!おかーさんうれしいよおおお!」 どうやら追いかける親を見て喋れるようになったらしい、よたよたと姉と親ゆっくりに近づく赤ちゃん。 それを子供達と親は幸せそうな顔で見ていた。赤ちゃんが親に擦り寄ろうと少し身を乗り出した。 「よっと」 「ゆっ?」 ぽちゃん。 男が糸を思い切り引っ張ると帽子が親ゆっくりから離れるように動いた。 乗り出していた子供はバランスを取れず川に投げ出される。 その場にいた者には赤ちゃんゆっくりが水に落ちるさまがスローで写った。 「い゙や゜あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 がこぼこと水の中で暴れる赤ちゃんゆっくり。しかしゆっくりは水に浮かない。暴れても沈んでいくのは避けれなかった。 そこに近づく小さな影。どうやら魚達が水に落ちた餌を食べに行ったのだろう。ここからじゃ見えないが親ゆっくりのすごい顔でどうなっているかは想像できる。 子供達も赤ちゃんを見ようと親と同じように乗り出したところで残りの三本の糸を引いた。 ざっぱーん! 三匹が川に落ちたことを確認すると、男は川岸に歩いていった。 「おじさん、だずげでえ゙え゙え゙え゙え゙!!」 親ゆっくりが自分の帽子に捕まりながら叫んでいた、掴んでいる場所から水が入ってすぐに沈むだろう。 自分の未来を想像して絶望していた矢先に男が長い棒を持ってやってきたのだ。まさに天の助けと思ったのだろう。 せめて自分だけでも助かる気なのか、男はそう思いながら釣竿を川に向けた。 男は魚で満たされた籠を持って里に戻った。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4732.html
「・・・ゆ・・・ゆゆ~ん・・・・・ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 まず一匹の赤れいむが目を覚まし、声を上げた。 「ゆぅ・・・ゆっ!ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっきゅり おきちゃよ!ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 「おきゃあしゃん!おちょうしゃん!ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 他の赤ゆっくり達もその声につられて順に目を覚ます。 「ゆ~ゆっ・・くり・・・していってね・・・」 寝ぼけ眼で、それでも本能の命じるままに挨拶を返す親れいむ。 親まりさも目を覚ました。 「ゆぅ・・・ゆっ!?なんだかいいにおいがするのぜ!まりさのごはんなのだぜ! ゆっ・・?ごはんどこなのぜ?」 自分の周りに漂っていた香しい匂いに一気に覚醒する。 散々餡子を喰らっていたにも関わらずまだ食おうと言うのか。 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」」」」」 皆が揃ったところで、改めておはようのゆっくり挨拶。 「ゆ?きょきょどきょ?」 そこで一匹の赤ゆっくりがようやく異変に気づく。 「ゆゆ~?」 「ゆ!?いつものゆっくりぷれいすじゃないんだぜ!」 キョロキョロと自分達の周りを見渡すゆっくり達。 そこは先程までゆっくり家族がいた森の中ではなく、 俺の家の敷地にある土蔵の中だった。 土蔵と言っても、俺は商いや農業を営んでいるわけでもなく、 それほど物も持っていないので、倉庫としては使っていない。 せいぜいがゆっくりで遊ぶときに使うくらいだ。 だから目に入るものと言えば、空の棚が幾つかと、外からの光が差し込む入り口、 土蔵には不釣り合いな大きく拡張した明かり取りの窓くらい。 あとは地面と壁と天井だけだ。 だが、それ故に普段草木が生い茂る森で暮らしているゆっくり達にとっては、 その広さが新鮮だったのだろう。 「ゆっ!ここはひろくてゆっくりできそうだよ!」 「まりしゃも ゆっきゅりちゅる~!」 「じめんしゃんが しゅじゅちくて きみょちぇいよ!」 「きょうからここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするんだぜ!」 今の状況になんら危機感を抱くこともなく、餡子脳天気にゆっくりするゆっくり達。 その様子の一部始終を土蔵の入り口の影から見守っていた俺がやおら姿を現し、 ゆっくり達に声をかける。 「おはよう!ゆっくりしていってね!」 「「ゆ!ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」」」」」 ゆっくり達が挨拶を返す。 「ゆゆっ?さっきのおにいさん?どうしてれいむたちのゆっくりぷれいすにいるの?」 親れいむが小首(?)を傾げて問いかける。 疑問に思うべきは何故俺がここにいるかではなく、何故お前らがここにいるか、なのだが。 まあ完全に眠りこけている間に俺に運び込まれたのだから、 餡子脳では"連れてこられた"という可能性を考えられないのも無理はない。 「あれ?忘れちゃったの? ここに来ればもっと美味しいご飯とあまあまをあげられるよって話をしたら 君達が行きたいって言ったから連れてきてあげたのに。」 勿論、そんな事は一言も言ってないわけだが。 「ゆっ!ゆっくりおもいだしたんだぜ! おじさんはさっさとおいしいごはんとあまあまをよこすんだぜ!」 「ごはんしゃんよこちぇ~!」 「あみゃあみゃちゃべちゃ~い!」 だから言ってねぇ。微塵も疑い無しかよ。 食べ物を貰えると思ってぴょんこぴょんこと跳ね寄ってくる赤ゆっくり達。 俺はゴクリと生唾を飲む。 思わず踏みつぶしそうになるのを必死に堪える。 赤ゆっくり達に続いて自分達も食べ物にありつこうと親ゆっくり達が跳ね寄ってくる。 ・・・・・・跳ね寄ってこようとする。そこで異常に気づく。 「ゆっ・・・?ゆゆっ!?」 「ゆぎぎ・・・うごげないんだぜぇ!?」 親まりさが目を覚ました時に嗅いだ香ばしい匂いの正体。 それは焼かれた饅頭の皮の匂いだったのだ。 麻酔が効いて眠っている間に親ゆっくり達の底面の皮はじっくり丹念に焼き焦がしてある。 こいつらはもう二度と元気に飛び跳ねることはおろか、 ずりずりと地べたを這うことすらできないのだ。 「ん?どうしたんだい?」 ニコニコと微笑みながら白々しく問いかける。 「[れいぶ][ばりざ]のあじが動がない゛よぉぉぉぉ!?どぉぉじでぇぇぇ!?」 親ゆっくり達が泣き喚く。 「どぉぢぢぇぇぇぇ!?」 「ゆ゛えーん!ゆ゛えーん!!」 「やぢゃー!おちょうしゃーん!おきゃあしゃーん!」 親達の泣き声が伝染したかのように赤ゆっくりも泣き出す。 「な、なんだってー(棒」 俺は驚きの叫びを上げながら親ゆっくりに近づくと、 底面が他のゆっくりから見えないようにしながら、 ひょいと親まりさを持ち上げてそのまま裏返す。 「うーん・・・」 唸り声を上げながらまりさの底面を睨むように見続ける。 そんな事をしなくても、原因が消し炭のように真っ黒に焼け焦げた底面の皮にあることは 一目瞭然なのだが。 「おにぃざぁぁん!!ばりざのあじ、どうなっでるのぉぉぉぉ!?」 涙やらよくわからない粘液やらを撒き散らしながら、 親まりさが必死の形相で俺に問いかける。 「なーんだ!何ともないよ!」 「「「「「ゆ?」」」」」 ゆっくり達が揃って不思議そうな声を上げる。 「じぇもぉぉぉ!あじが!ばりざのあじがうごがないんだぜぇぇぇ!?」 流石に何ともないと言われても、現に足が動かなくなった張本ゆっくりとしては、 なんだそうでしたか、とは納得できないのでろう。 ゆっくゆっくとしゃくりあげながら首?をブンブン振るまりさ。 「ハハハ、足は何ともなってないよ。 さっきあまあまを食べ過ぎちゃったせいでお腹一杯で動けないんだね。 少しゆっくりしてれば、すぐに動けるようになるよ!」 にこやかな顔で嘘八百を教える俺。 「ゆゅ・・・?そう・・・なの・・・?」 実際のところはそこまで腹一杯でもないだろうに、 自分に都合よく物事を解釈する餡子脳故に俺の言葉を信じ込み、 ホッとしたような表情を見せる親ゆっくり達。 「なんぢょもな゛ぎゃっぢゃよ゛ぉぉぉぉ!!」 「ゆ゛えーん!ゆ゛えーん!!」 「よきゃっちゃよー!おちょうしゃーん!おきゃあしゃーん!」 これには赤ゆっくり達も嬉し泣きだ。 嘘なのにな。 「動けなくなるまであまあま食べちゃうなんて、 赤ちゃん達のお父さんとお母さんは、とてもゆっくりした食いしん坊さんだね!」 俺は赤ゆっくり達にそう言って笑いかける。 「「「「「くいちんびょうちゃんぢゃね!!」」」」」 今さっきまでゆんゆん泣いていた赤ゆっくり達も一緒になって笑う。 大好きなお父さんお母さんが無事だった(笑)とわかって安堵しきっているのだろう。 「ゆっへへ・・・」 それを聞いて照れ笑いをする親ゆっくり達。 「よーし!じゃあ赤ちゃん達もお父さんとお母さんに負けないくらい 美味しいご飯とあまあまを一杯食べようか!?」 「ゆゆっ!?ちゃべゆ~!」 「りぇいみゅも いっぱいちゃべゆよ!!」 「まぃちゃも くいちんびょうにゃんぢゃじぇ!」 ご飯とあまあまの事を思い出し、その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら喜びの声を上げる。 危機が去ったと思いこんで安心した親ゆっくり達も微笑みながらその様子を眺めている。 「でもその前に、お兄さんからお願いがあるんだ。」 「ゆ?」 「おにぇぎゃい?」 「やぢゃやぢゃ!ごはんしゃん!あみゃあみゃしゃん!」 早速駄々をこねている堪え性のない赤ゆっくりもいるが無視。 親ゆっくり達も何事かとこちらの様子を伺っている。 「うん・・・実はね・・・・・・お兄さん可愛い赤ちゃんとすーりすーりしたいんだ!」 念のため断っておくが、この場合のすりすりはゆっくり達が子作りのときにする すりすりの方ではなく、親子や姉妹で親愛の情を示す時のすりすりの方だ。 断じて俺は変態お兄さんではないので誤解しないで欲しい。 「ゆ?しゅーりしゅーり?」 「うん、すーりすーり。お母さん達もいいかな? 赤ちゃんとすーりすーりさせてもらっても?」 と親ゆっくりに向かって尋ねる。 一瞬親ゆっくりは戸惑う。 人間とすーりすーりするなど今までに経験が無い。 そこまでゆっくり信用できる相手なのだろうか? が、この人間は自分達を今のところゆっくりさせてくれているという誤った認識と これから美味しい食事を貰えるという期待から気が緩んでいた親ゆっくりは すーりすーりをさせても害はないと判断した。 「ゆっ!とくべつだよ!そのかわりにおいしいごはんをいっぱいちょうだいね!」 「おいしいあまあまもなんだぜ!」 「ハハハ、勿論だよ!お兄さんとすーりすーりしてくれた赤ちゃんには 一番美味しいご飯を上げるよ!さあ、どの子がすーりすーりしてくれるのかな?」 「「「「「ゆゆぅ~~!!」」」」」 "一番美味しいご飯"という言葉に期待に瞳をキラキラ輝かせる赤ゆっくり達。 我先にと飛び跳ねながら俺に近づいてくる。 そして一番に辿り着いたのは、さっき俺のお願いを聞きもしないうちから 「やぢゃやぢゃ」とか言って断った赤ちゃん、赤まりさだった。 「しゅ~り しゅ~り♪おにぃしゃんちょ、しゅ~り しゅ~り♪」 俺の靴にほっぺを押しつけすーりすーりをする。 靴越しなんで全然感触は伝わらない。 「ゆぇぇぇん!!!まりしゃ じゅるいよ~!!」 「りぇいみゅが おにぃしゃんと しゅーりしゅーりしゅりゅのにぃぇぇぇ!!」 遅れを取った他の赤ゆっくり達は泣き出してしまう。 当然ながら一番美味しいご飯にありつけなくなってしまった事を嘆いてるわけなのだが、 その理由とは別の理由で、この赤ゆっくり達は遅れを取ったことを嘆く権利がある。 何故なら今俺にすーりすーりしている赤まりさが一番の幸せ者だからだ。 楽に終われるという点で。 「しゅーりしゅーり♪」 「すーりすーり♪」 姉妹達が羨ましそうに妬ましそうに見つめる中、 赤まりさと一緒になって楽しそうに声をあげる俺。 姉妹達の心情を知ってか知らずか、 赤まりさと俺の楽しそうな様子に親ゆっくり達も嬉しそうな表情をしている。 ひゃあっ!ノッてきたぞぉ! 「よーし!お兄さんも赤ちゃんにすーりすーり♪しちゃうぞ!」 高らかにそう宣言すると俺はすーりすーりされている方の足を持ち上げた。 「ゆっ??」 突然すーりすーりの対象を失った赤まりさが困惑の声を上げる。 俺の足を探して周りを見回し・・・それから真上を仰ぎ見て"ソレ"を見つけた。 「ゆゅ・・・?ゆぺぇっ!?」 「すーりすーり♪すーりすーり♪赤ちゃんとすーりすーり♪」 楽しそうな俺の声に合わせて、すーりすーりを繰り返す俺の靴と、地面。 実際の擬音は『すーりすーり』よりは『ずしゃりずしゃり』 とでも表現した方が正しいかもしれない。 「「「「「「ゆ・・・・?」」」」」」 他の赤ゆっくり達と親ゆっくり達はその一語だけ発すると、 先程までの恨めしそうな表情や、嬉しそうな表情を 凍りついたように貼り付けたまま固まっている。 まるで目の前で起こっている事の意味がわからない、とでも言うかのように。 「すーりすーり♪すーりすーり♪し!しあわせぇ~っ!!」 歓喜の声をあげる俺。最後の「しあわせぇ」は芝居抜きのガチのしあわせコールだ。 「しあわせぇ~!しあわせぇぇぇぇぇ!!」 土蔵の地面の固い土を掘り起こさんとするかのように 靴をガシュガシュと激しく擦りつける。 その靴の脇から黒い餡子が徐々にはみ出して来た。 「ゆ・・・ゆ・・・ゆ゛ぎゃあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」 最初に口を開いたのは一匹の赤れいむだった。 「ゆぎゃあぁぁぁ!!!ばりざのがわいぃあがぢゃんがぁぁぁぁぁ!!!!」 「ぉぼっ!・・・どぼっ!どぼぉじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉっ!?!?」 「れいびゅの いみょうちょがぁぁぁぁ!!!」 それを皮切りに次々と絶叫するゆっくり一家。 「おや?どうしたんだい?」 俺はその絶叫を柳に風と受け流し、涼しい顔で尋ねる。 「お゛に゛ぃざんが、れいぶのがわいいあがぢゃんをづぶぢだんでじょぉぉぉ!?!?」 「じねぇぇぇ!!!!ゆっぐりでぎないぐぞじじいはじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ぢぢぃは ぢねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆげ・・・・ゆげぇ・・・・・」 俺に向かってゆっくり達の罵声が飛ぶ。 一匹の赤ゆっくりはショックで少し餡子を吐いている。 足下に視線と落とし、ひょいと赤まりさを踏みつぶしていた足を持ち上げる。 その下にあったのは、散乱する餡子とただのボロ布と化した黒い帽子の残骸、 そして散々に地面さんと仲良くすーりすーりさせられて、 かつての3倍くらいの面積にビローンと広がった赤まりさの饅頭皮。 あちこち破れてはいるがまだ目と口の形を残したそれは、 想像を絶する苦悶に歪んだ、赤まりさのデスマスクそのものであった。 はぁぁぁぁぁん!この顔堪んねぇぇぇ!! 「ゆっぐぅぅぅ!!ゆっぐじじないでざっざとじ スウと息を吸って 「どおじであがぢゃんがじんでるのおおおおお(棒」 親まりさの罵声を遮るように、今度は俺が大声を張り上げた。 「「「ゆっ?!」」」 予想だにしなかった俺の台詞に事態を飲み込めず一瞬ゆっくり達の追及が止む。 「おにいざんはーあがぢゃんにずーりずーりじだだげなのにいい(棒」 その隙にまた大声を上げる。 うん。大丈夫。ハタから見なくても気色悪いというのはわかってるから。 心配しないで欲しい。大丈夫。俺は大丈夫。 「ゆっぎぃぃぃ!! おっぎなにんげんざんのあじで ずーりずーりじだら、 あがぢゃん づぶでぢゃうにぎまっでるでじょぉぉぉ!? ぞんなごどもわがらないのぉぉ!? ばがなのぉぉぉ!?じぬのぉぉぉ!?」 故意の犯行ではない、そんな戯言を信じでもしたのか 親れいむが俺にわざわざ説明してくれながら非難の声を向ける。 「ごべんね゛えええ、あ゛がぢゃんごべんね゛えええ(棒」 「おにいざん、あがぢゃんのがらだがごんなによわいなんてじらながったんだよおお(棒」 「ゆるじでええええ。あがぢゃんゆるじでええええ。(棒」 「おどうざんとおがあざんもゆるじでええええ。(棒」 「おねえぢゃんだぢもゆるじでねええええ(棒」 両手で顔を覆い、泣き真似をしながら、 寺子屋時代の学芸会で 「森の木々の躍動感を演じさせたらお前の右に出るものはいない」 と先生に熱弁させしめた俺の迫真の演技が続く。 「ちらにゃかっちゃで ちゅみゅきゃ~ !!」 「ぢね!ぢね!ゆっぎゅりじぇぎにゃい ぢぢぃはぢね!」 「まぃちゃの いもうちょを ぎゃえぜぇ!!」 「ゆりゅちゃにゃい!ぜっちゃいにぢゃぁ!」 おっと今度は赤ゆっくりからの集中砲火だ。 びょんびょん飛び跳ねたり、ぷくぅと膨れたりして怒りを表現している。 「や゛っばりゆるじでもらべない゛よおおおお(棒」 「あがぢゃんだぢにぎらわれぢゃっだよおおおお(棒」 「ずっごぐおいじいあまあま、たべでもらおうどおぼっでだのにぃ、 ごれじゃもうだべでもらえないよおお(棒」 最後の台詞をひときわ大きな声で感情たっぷりに読み上げた後、 顔を覆った両手をずらしてゆっくり達をチラッ、と見る。 「「「「ゆ!?」」」」 案の定、"凄く美味しいあまあま"という言葉に反応して動きが止まっている赤ゆっくり達。 「ずっごぐゆっぐりでぎるざいごうぎゅうのあまあまだっだのにぃぃ(棒」 「おにいざんぎらわれぢゃっだがらだべでもらえないよおおおお(棒」 更にダメ押しをする。 「ゆ・・・ゆゆぅ・・・ちらにゃかっちゃんにゃら ちょうがにやいよにぇ!」 「ゆりゅちてあげりゅきゃら、おにぃしゃんも ゆっきゅりちようにぇ!」 「まぃちゃの いもうちょにょ びゅんまで、ゆっきゅりちゅるよ!」 「りぇいみゅは おにいしゃんにょきょと だいしゅきだよ?」 何、この逆転判決。 食い意地張りすぎだろお前ら。 「ありがとう赤ちゃん達・・・でもだめだよ・・・ お父さんとお母さんが許してくれないよ・・・ お兄さんが赤ちゃん達に近づいたらお父さんとお母さんが怒るよ・・・」 俺は顔を手で覆ったまま途切れ途切れに答える。 正直笑い声を抑えるのがしんどい。 「ゆっ!おきゃあしゃん!ゆっきゅり おにぃしゃんを ゆるちちぇあげちぇね!」 「ふきょうな じきょだっちゃんぢゃよ!」 「にくちみは、にゃにみょ うみゃないんぢゃよ!」 「おちょうしゃぁん!おにぃしゃんを おこっちゃやぢゃぁぁ!!」 一転して弁護側に回った赤ちゃん達に戸惑う親ゆっくり。 だが流石に親ゆっくり達は事故とは言え大事な赤ちゃんの命を奪った人間に対して 不信感を拭いきれないようだ。 「ゆ!このおにいさんとはゆっくりできないよ!あかちゃんたちゆっくりりかいしてね!」 と赤ゆっくりを嗜めようとするが、あまあまに目が眩んでいる赤ゆっくり達は そんな親の言葉を聞こうともせず駄々をこね続ける。 「そうだ!お兄さんゆっくりの体を凄く丈夫にする方法を知ってるんだ! お詫びに他の赤ちゃんの体を丈夫にして、 お兄さんが死なせちゃった赤ちゃんの分までゆっくりできるようにしてあげるよ!」 「ゆ!?あかちゃんをじょうぶに!?」 「それってゆっくりできるの!?」 「そうだよ!れみりゃにだって食べられないくらいに丈夫になれるよ!」 「「ゆゆ~!?」」 親ゆっくり達は相当にびっくりしているようだ。 れみりゃと言えば、人間の恐ろしさは理解していないバカ饅頭共ですら 自分達の天敵として畏れる捕食種のかりすま(笑)だ。 そのれみりゃですら危害が加えられなくなるのだとしたらもはや無敵、 いつまでもずっとゆっくりできるではないか。 餡子脳ならそう理解したとしても不思議ではない。 ようやく俺の提案を前向きに検討しようと考えた親ゆっくりは相談を始める。 「ゆゆぅ・・・どうするまりさ?」 「きまってるんだぜ! あかちゃんたちをじょうぶにさせたら、このばかなにんげんをおどして、 まりさたちのどれいにしてやるんだぜ! れみりゃでもたべられないくらいにつよいあかちゃんなら みんなでかかったら、にんげんなんていちころなんだぜ!」 「ゆっ!さすがまりさだね!」 本人達はひそひそと話をしているつもりらしいが、 普段より声がわずかに小さいくらいなので俺からは丸聞こえなんですが。 「ゆ!おにいさんがころした れいむたちのおちびちゃんのことは、 ほかのあかちゃんにめんじて みずにながしてあげるよ!」 「だからおにいさんは、ゆっくりまりさたちのあかちゃんをじょうぶにするんだぜ! あとまりさたちにも、すっごくおいしいあまあまさんをよこすんだぜ!」 憎ったらしい笑いを口の端に浮かべながら俺に赦しを施す親ゆっくり。 ちゃっかり自分達にもあまあまを要求することも忘れない。 「ありがとう!ありがとう!じゃあすぐに準備するからちょっと待っててね!」 そう言いながら俺は土蔵を飛び出した。 -------------------------------- 三分ほどしてから、俺は予め母屋に用意しておいた虐待道具一式が入った木箱を抱えて 土蔵に戻ってきた。 「おそいんだぜ!ゆっくりまちくたびれたんだぜ!」 親まりさに責められた。 あんまり早く戻ってくると初めから準備しておいた事がバレてしまうと思い、 はやる気持ちを抑えて時間を潰してから来たわけだが、 饅頭に知性がある可能性を考慮した俺がバカだったようだ。 「ごめんごめん!すぐ始めるからね!」 木箱を床に置くとそこからブリキ缶を二個取り出して蓋を開ける。 両方共に透明な液体がたっぷりと入っている。 「さあ、どの赤ちゃんから始めようか?」 「「「「ゆ・・・」」」」 赤ゆっくり達が互いに顔を見合わせる。 先程真っ先に名乗りを上げた赤まりさが不幸な事故とは言え、 あんな結果になってしまったことがトラウマになっているのであろう。 暫く逡巡していたが一匹の赤れいむが名乗りを上げた。 「ゆっ!れいみゅは おねいちゃんぢゃから れいみゅが いちぇばんぢゃよ!」 どうやらこいつが長女れいむらしい。 「よーし、じゃあれいむちゃんからだ!」 差し出した俺の手にぴょん!と飛び乗る赤れいむ。 「ちょっとだけチクッとするよー。」 「ゆゆっ!?いちゃいのやぢゃあぁぁぁ!」 まだ何もされていないのに泣き出して俺の掌の上でジタジタと暴れ出す赤れいむ。 構わずに赤れいむを指で軽く摘むと、素早く木箱から竹串を取り出して 赤れいむの底部に突き刺し、頭頂部まで一気に貫通させた。 その様はまるで串団子のようだ。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 「「あがぢゃああぁぁぁぁん!!!!!」」 「「「いやぢゃぁぁぁ!!!おねいぢゃんが ぢんぢゃうぅぅ!!!」」」 心地よいゆっくり一家の絶叫を聞きながら、 赤れいむを刺した竹串を一方のブリキ缶にドポッと浸けると 当の赤れいむの絶叫だけ聞こえなくなる。 そのまま竹串を液体の中で何回かクルクルと回してから竹串を引き上げた。 赤れいむの全身は水飴のようなドロリとした透明な液体に包まれていた。 いまだ絶叫をあげ続ける赤れいむの大きく開いた口にも、 液体がたっぷりとまとわりついている。 赤れいむの顔が上側を向くように竹串を持っているため、 赤れいむが悲鳴を上げても粘性の強い液体は零れ落ちることもなく、 赤れいむの口を塞いだままだった。 その液体の正体はゴム系の成形剤だった。 そして残るブリキ缶の中の液体、こちらは水のようにさらさらとした液体、 そちらに赤れいむの刺さった竹串をボチャンと浸ける。 今度はすぐに竹串を引き揚げる。 こちらは成形剤とセットで使用する硬化剤だった。 しかも瞬時に反応して数秒で硬化する優れものだ。 あっという間に赤れいむを覆っていた厚さ5ミリ程のゴム層は中まで硬化した。 最後に、竹串を引き抜き開いた穴の部分に瞬間接着剤を詰めて完全に密封して・・・ 完成だ! そこにあったのは、一言で言い表すなら 赤ゆっくりを封入した透明なスーパーボール、だった。 透明度の高いゴムは、先程竹串を刺された痛みに涙を浮かべたままの赤れいむの表情も はっきりと見てとれる程だ。 「ゆぅぅぅ・・・いちゃいよぉ・・・・」 完全に封入してしまうと、赤ゆっくりの声が聞こえなくなるかもしれないと 危惧していたのだが、小声でややくぐもってはいるが、何とか聞き取れるレベルだ。 もともとゆっくり共は声が大きいから、それも幸いしているのだろう。 まったく隙間なくゴムで覆ってしまっているため、外部からの酸素供給はできない。 ゆっくりと言えども酸素無しでは生きられないのだが、 奴らは呼吸できない環境下に置かれても数時間~半日程度は生存していることが 各所での実験で判明している。 最近の研究でわかったことだが、どうも外部から酸素を摂取できない場合には、 自分の餡子の成分から酸素を抽出して摂取可能らしいのだ。 そのため、餡子内の酸素を使い切るまでの間は生存が可能という仕組みらしい。 体が小さく餡子量の少ない赤ゆっくりであっても、その分酸素消費量も少ないため、 生存期間は成体ゆっくりの場合と大差ない。 さきほど餡子を腹一杯食べさせて中の餡子も充実しているであろうし、 この赤ゆっくりも十分生き続けてくれることだろう。 少なくとも俺が直接手を下すまでの間は。 「おにいさん!れいむのあかちゃんをかえしてね! ゆっくりしないでいそいでかえしてね!」 俺が赤れいむを串刺しにしたことを怒ったのか、 泣きながらぷくぅと膨れた親れいむが抗議する。 「痛くしちゃってごめんねぇ、赤ちゃん。 でもこれは赤ちゃんの体を丈夫にするために必要なことなんだ。 ゆっくり我慢したから後で美味しいあまあまさんをたくさんあげようね!」 「・・・ゆ・・・ゆぅ・・・・・」 まだ涙目のままだが、あまあまという言葉にようやく泣きやむ赤れいむ。 それを見て、ブルブルと震えていた他の赤ゆっくり達もようやく落ち着きを取り戻す。 「よーしいい子だね! さあこれでれいむちゃんはれみりゃにも負けない丈夫なゆっくりになったよ! どれくらい丈夫になったか見せてあげるね!」 そう言って俺は赤れいむボールを持ったまま、親まりさの前で座り込むと、 親まりさの帽子を持ち上げた。 大事な帽子を奪われたと思った親まりさが涙目になる。 「ゆゆっ!?まりさのおぼうし!かえ 『バチンッ!!』 ゆぎゃっ!!」 いきなりデコピンを喰らわされ、悲鳴をあげる親まりさ。 「いだいんだじぇぇぇぇ!!ばりざのあだまがぁぁ!!!あだまがわ゛でだぁぁぁ!!」 幾らゆっくりが脆弱とは言え、デコピン一発程度で皮が破れたりはしないのだが、 親まりさは致命傷を喰らったかのような勢いで泣き叫ぶ。 今まで散々デカい態度を取っていたくせに、どんだけ打たれ弱いんだコイツ。 「ゆぅぅぅ!!れいむもうおこったよ!! もうあやまってもゆるさないよ!!れいむのまりさのあたまを・・・ ・・・ゆゆ・・・?まりさのあたまわれてないよ・・・?」 愛するパートナーに振るわれた非道に、怒りを露わにした親れいむだが、 そこでようやくまりさの頭が少しへこんでいる程度でそれ以上の外傷がないことに気づく。 「ゆゆっ!?・・・ゆ・・・つよいまりさだから、なんとかたえられたのぜ・・・? ふつうのゆっくりだったら、かくじつにしんでるのぜ・・・ ・・・ゆっ!でもいたかったんだぜ! じじぃはばつとしてまりさにあまあまをもってくるんだぜ!」 大げさに泣き叫んだ恥ずかしさに強がりを言って誤魔化そうとする親まりさ。 「そうかい、痛かったかい?」 「ゆっ!とってもいたかったんだぜ!! まりさじゃなかったら、いまごろいたみにのたうちまわってるんだぜ!」 お前だって足焼いてなかったらのたうち回ってたろうに。 「じゃあ、この赤ちゃんにも同じ事をしちゃおっかなー?」 そう言って、赤れいむボールの目の前でデコピン発射態勢に入る。 「ゆぁーー!?やめちぇぇぇぇぇ!!!」 赤れいむボールが恐怖に引きつり泣き喚く。 「れいぶのあがぢゃんにひどいごどじないでぇぇぇぇぇ!!!」 「や゛べろぉぉぉ!ぐぞじじぃぃぃぃ!!!」 「おねぃちゃんをはなちぇぇぇぇ!!」 「だーめ♪」 バチィンッ!!! 親まりさへのデコピン以上に激しい音がゆっくり達の悲鳴を掻き消すように鳴り響く。 成体のゆっくりならともかく、皮の薄い赤ゆっくりでは、 例えデコピンでも致命打になりかねない。 ゆっくり一家は惨劇の予感に言葉を失って静まりかえった。 が、 「・・・・ゆ・・・・?・・・いちゃく・・・にゃいよ・・・?」 赤れいむボールが不思議そうな声を上げた。 「あかちゃん?!だいじょうぶ?!けがしてない?!」 自分の赤ちゃんが無事であることに驚きながらも、 親れいむが心配そうに矢継ぎ早に声をかける。 「ゆ・・・!りゃいじょうびゅぢゃよ!れいみゅ、じぇんじぇん いちゃくないよ!!」 それに元気な声で答える赤れいむボール。 赤れいむを包んだこのゴムは、通常のゴムよりも弾力性に富む性質を持っており、 厚さ5ミリ程度でも相当の衝撃吸収力を発揮する。 デコピンの衝撃などは完全に吸収してしまい、 恐らく中の赤れいむは撫でられた程にも感じていなかったであろう。 むしろ俺の指の方が痛い。 「ゆゅ~・・・ほんとう・・・? ゆっ!すごいよ!れいむのあかちゃんはすごいがんじょうだね! これならとってもゆっくりできるね!!」 親れいむは安堵の声を漏らし、それに続いて、 自分の赤ちゃんがとても強くてゆっくりできる子になった事に喜びの声を漏らす。 「見たかい!?強いまりさお父さんですら泣いてしまった、 お兄さんのスペシャル痛い攻撃を喰らっても、 れいむちゃんは痛くも痒くもないんだよ! れいむちゃんは強いまりさお父さんなんかより全然強くなっちゃったよ!!」 「「「ゆゆ~!!おねいちゃんしゅご~い!!」」」 赤れいむボールに羨望と尊敬の眼差しを向ける他の赤ゆっくり達。 「ゆぅ~♪」 親れいむも嬉しそうだ。 「・・ゅ・・・」 父親の沽券丸潰れとなった親まりさ一人が複雑な表情をしている。 「ゆっ!!まぃちゃも!おにいしゃん!まぃちゃも ちゅよくにゃりちゃい!!」 「りぇいみゅがちゃき~!!」 「ちゅよくちちぇ!ちゅよくちちぇ!」 残る赤ゆっくり達は、自分達もお姉さんれいむと同じように 強くしてもらえるのだと思い出し、大喜びで俺に向かって飛び跳ねてくる。 「ちょっと待ってね。ちゃんと皆丈夫にしてあげるからね~」 そう。まだ実験が済んでない。 ゴムの厚さはこの程度で問題ないか、強度実験をしなければならない。 どの程度までなら耐えられて、そして、どの程度を越えたら耐えられないか、を。 俺は赤れいむボールを握るとスッと立ち上がり、その手を頭上に大きく振りかぶる。 「ゆゆっ!?れいみゅ おちょらを ちょんでるみちゃ~い♪」 キャッキャッと嬉しそうに喚く赤れいむボール。 左足を上げ、赤れいむボールを握った右腕を後ろに反らす。 そして次の瞬間、左足を一歩前に踏み込むと同時、 後ろに反らした右腕を正面に向かって一気に振り抜いた。 「ゆ~!とりしゃ--- ゆびゅっ!!!」 土蔵の壁に向かって思いっきり投げつけられた赤れいむボールが 鳥さんみたいなどと暢気に喜んだのも束の間、次の瞬間には悲鳴を上げる。 デコピン程度の衝撃ならともかく、固い壁に思い切り叩きつけられた場合、 インパクトの瞬間にゴムのボールは大きくたわむ事になる。 それはつまり、中にいる赤ゆっくりがその分押し潰されるということだ。 「びゅっ!!」 「ゆびっ!!」 「ゆげっ!!」 弾力性に富んだゴムでできた赤れいむボールは、 中身の大半は脆い饅頭であるにも関わらず、スーパーボール並の反発力を発揮し、 壁に当たった後もまだ勢いを失い切ることなくバウンドする。 土蔵の柱やら壁やらをいったりきたりし、その度に中の赤れいむの悲鳴が漏れる。 コロコロコロ・・・ 何度かのバウンドを繰り返した後で、 ようやく勢いを落として地面を転がってきた赤れいむボールを拾い上げる。 ドキドキしながら、その中の赤れいむの様子を観察する。 「ゆびっ・・・!・・いちゃ・・・い・・・いちゃ・・・い・・ょ・・ゆっ・・・!」 衝撃にたわんだゴムごと体を何度も押し潰され、 痛みにピクピクと痙攣しながら涙を流す赤れいむ。 可愛い・・・・ なんて可愛らしいんだろう・・・ それほどのダメージを受けたにも関わらず、赤れいむの脆い皮は少しも破れてはいない。 何カ所か皮が薄くなって黒い餡子が僅かに透けて見えているところがある程度だ。 体を潰される程の外圧を受ければ、反動で圧力を受けた方向と別方向に内圧がかかる。 口などが塞がれた状態のゆっくりの場合、その内圧を皮で受け止める羽目になり、 その箇所の強度を超えれば、そこから破れて餡子を噴出してしまう。 だが、全身をゴムで包まれたこの赤れいむは口や目はおろか、 全身の皮すらもすっぽり外側から押さえ込まれた状態になっているため、 内圧に耐えることができるのだ! なんと素晴らしいことだ! これが人間や普通の動物であればそうはいかない。 例え外皮がダメージを受けなくても、体がたわむくらいの外圧が加われば、 その時点で内蔵や骨などに重大な損傷を受け致命傷となる。 しかし、中に餡子しか詰まっておらず、大量の餡子を喪失するか、 餡子が過熱や酸素不足などで"変質"して、ゆっくりの生命維持機能を失わない限り 基本的に死ぬことのないゆっくりにとっては致命傷とはならない。 無論、苦しいか苦しくないかは別の話。 つまりこの赤ゆっくりは俺の大好きな"踏み潰し"から命"だけ"を守る強靱な鎧を備え、 なおかつ存分に"踏み潰し"て痛みを与える事が可能な、 正に俺の夢の体現と言うべき『スーパー赤ゆっくりボール』となったのだ! つづきます
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2059.html
むかしむかしでもないごく最近。 あるところに、ゆっくりを虐めることを至上の喜びとしているお兄さんがいました。 ある時、お兄さんが、ゆっくりを捕まえるために罠を作っていました。 そんな所に、桃色の髪をしたゆっくりがじっとお兄さんを冷ややかに見つめていました。 視線に気付いたお兄さんは、(桃色の髪?ゆゆこか?)と考えていると、桃髪ゆっくりがしゃべりだしました。 「私はゆゆこではありません。私はゆっくりさとり。あなたは…ゆっくり虐待を生きがいとしているゲダモノですね」 お兄さんはカチンときました。いきなり見たことも無いゆっくりに『ケダモノ』扱いされたのですから。 捕獲道具をとり、ゆっくりさとりを捕まえようとしました。 「おや、私を捕まえて、虐待しようとしていますね。…ふむふむ、まずは足を焼いて、そのあと穴を開けて私の中身の味見ですか。…ほうほう、もし美味しければ発情ありすを捕まえて繁殖させようと言うのですか」 お兄さんは驚きました。まるで自分の考えをゆっくりさとりに朗読されているようです。 「驚きましたか?えぇ、私は心を読むことができます。あなたが私をどう捕まえようかともどう虐めてやろうかともみーんな読めますよ」と、不敵な笑みを浮かべるゆっくりさとり。 お兄さんは完全にキレてゆっくりさとりに襲い掛かりました。 ですが、どう襲い掛かっても、ゆっくりさとりを捕まえるどころか、逆に翻弄されてしまいます。 「まっすぐストレートにぶっ飛ばす」ひょいっ「今度は左から」ぴょん「上から来るぞと見せかけて左から」すかっ お兄さんに焦りが生じると、ますます攻撃があたりません。そして ガサッ! お兄さんは自分の仕掛けた罠に気づかず頭から網をかぶって身動きが取れなくなってしまいました。 「あらあら、自分の罠に自分がかかるなんて、わかりますよ、その悔しさ、私を一思いに潰してやろうと言う憎しみ。でも残念でしたね」と、揚々と奥へ行こうとした瞬間。 ズボッ 「え!?」 サクッ 「ギャッ」 突如、ゆっくりさとりは穴に落ち、短い断末魔の叫びを上げました。 網から脱出したお兄さんはその穴を覗き込みました。 穴のそこには、付近から生え出た木の根に刺さって絶命していたゆっくりさとりの残骸がありました。 お兄さんはその穴を知りませんでした。それ故、ゆっくりさとりもその穴に気づかなかったのでしょう。 味見しようにも、お兄さんにはその穴の幅は狭く残骸に届かなかったので、そのまま穴を埋めました。 お兄さんは、なんだか興が冷めてしまい、その日は帰ってすぐに寝てしまいましたとさ。 その後、各地で新たなゆっくりの存在が確認されることとなるのは別の話。 以下俺設定 ゆっくりさとり 心を読める希少種ゆっくり。 そのため、他者による襲撃からの生存率はきわめて高い。 反面、心の無い自然災害にはきわめて弱い。 悪いゆっくりさとりは、読んだ心をわざわざ朗読し、心を読まれたものの狼狽振りをニヨニヨしながらあざ笑う。 良いゆっくりさとりは、そもそも心を読むことを嫌悪しているため、めったに現れることは無い。 あとがき ぶっちゃけ、「サトリ」の物語をゆっくり風にしてみただけです。 そろそろ地霊のゆっくりも現れるかなと思い書いてみました。 駄文、失礼しました。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1398.html
冬眠ゆっくりの子守唄 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 そのゆっくりれいむが通ると、誰もがあたたかな声をかける。 「ゆっくり、していってね」 答えるれいむは上品だった。物腰たおやかで、そして美しかった。 魔法の森の誰もがうらやむ、最上のゆっくり、それが彼女だった。 「ゆっくりー……」 柔らかな草の上に座り、ただゆっくりと日を浴びる、それだけでも花のように絵にな るゆっくりだった。 「ゆっくりちちぇっちぇね!」 「ゆっくりちちぇっちぇね!」 小石ほどのちっちゃな赤ちゃんまりさや赤ちゃんれいむたちが、蝶を追ってぴょんぴょ んと飛んでいく。それを見ると、ぴょんと横から蝶を捕まえ、赤ちゃんたちにやった。 「はい、ちょうちょさんよ」 「ありがちょ、おねーたん!」 「やさしいね、おねーたん!」 感謝するちびたちに、無言でにっこりと笑いかける。 ゆっくり特有の騒々しさもなく、控えめで、優しい。本当によく出来たゆっくりだっ た。 そのれいむは、一年を母親の下で過ごし、そろそろ一人立ちを迎えようとするころだっ た。こんなにも器量よしで気立てのよいゆっくりなので、もちろん大勢のゆっくりたち が彼女を慕っていた。 「れいむとゆっくりつきあってね!」 「まりさとゆっくりつきあってほしいんだぜ!」 「あっあっあアリスと赤ちゃんをつくりましょぉ~~~~~!」 そんな誘いにも、れいむは頬を赤らめて、つつましく辞退していた。 「もうちょっと、ゆっくりかんがえさせてね」 彼女が一体誰と付き合うのか、森のゆっくりたちはやきもきしていた。 れいむの母親は、保守的な考えの持ち主だった。 「れいむはまだまだこどもだよ! 次の春までゆっくりと成長して、それからすてきな 人を見つけるといいよ!」 れいむ本人も、漠然とそんなふうに考えていた。 まだまだ、恋というものを遠くの虹のように考えていたのだ。 だが、恋のほうではれいむを待ってくれなかった。 ある日のこと、草むらをゆくゆくとしとやかに歩いていたれいむは、隠れていた蛇に 襲われた。悲鳴を上げて逃げようとした時、石をくわえて蛇を叩きのめしてくれたゆっ くりがいた。 「このあたりは危ないんだぜ。ゆっくりしないで通り抜けてね!」 そのまりさは、れいむにしばらく目を留めていたが、他のゆっくりのようにれいむの 美貌に惑わされて口説き始めたりはせず、黒い帽子を翻してそっけなく去っていった。 「すてきなひと……!」 ゆっくりれいむの餡子ハートが、きゅんきゅん鳴り始めた瞬間だった。 ほどなくそのまりさの素性がわかった。魔法の森のはずれの石地に暮らす、一人身の ゆっくりだった。 数日後、れいむはとびきり色艶のいいアマガエルをくわえて彼女に近づき、震えるハ ートに勇気を奮い起こして話しかけた。 「あの、せんじつはありがとう……いっしょにゆっくりしてね?」 「ゆっ?」 振り向いたまりさは、しばらくれいむを見つめてから、やがてにっこりとほほえんで くれた。 「ああ、あのときの……」 覚えていてくれた。それだけのことで、れいむは天にも昇る心地になった。 「これ、おれいなの。ゆっくりたべてね……?」 まりさはカエルを見て、べろんと舌を伸ばして食べてくれたが、ふいと向こうをむい てしまった。 「ありがとう。でも、ゆっくり帰ってね」 「どうして? れいむ、もっと……まりさといたいよ」 「ゆぅぅ、それはだめだよ」 「どうして?」 「だってまりさは……ばつをうけている身だからね」 まりさの告白は、衝撃的なものだった。 彼女はむかし、母親や姉妹たちと大きな家族で暮らしていた。ある日のこと、その家 族がゆっくりれみりゃに襲われた。母まりさが立ち向かい、子供たちも必死に手助けし たが、空を飛ぶゆっくりには勝てなかった。母も姉妹も体のあちこちをつまみぐいされ、 身動き取れなくなった。 そのとき、一人だけ無傷だったこのまりさは、家族を捨てて逃げたのだった。 「おかあさんがさけんでいたよ。『まりさだけでも、逃げてゆっくりしてね……!』っ て」 だが森のゆっくりたちは、このまりさに冷たい目を注いだ。家族を見捨てたゆっくり としてつまはじきにし、森のはずれのこんな寒々しい土地に追い出したのだ。 そこまで聞いた時、やさしいゆっくりれいむの目から、熱いものがあふれ出した。 「どお゛じでぞんな゛目゛にあっでるのぉぉ……!」 同情が胸を締め付ける。その痛みはすぐに、甘い共感に変わった。 我知らずれいむは、まりさに頬をすりつけていた。 強く強く、いっぱいの気持ちを込めて、すりすりと……。 「れ、れいむ……」 「つらかったよね、さびしかったよね……!」 すり寄るれいむに対して、まりさはとうとう何も言わなかった。 だが、別れ際に一度だけ、自分からそっと頬を当ててくれた。 れいむには、それだけで十分だった。 その日から、二人のひそかな逢瀬が始まった。 森のゆっくりたちの目をかすめて、石の荒地で、木陰のうろで、滝つぼの陰で、ふた りは密会を重ねるようになった。 密会といっても、二人とも前の冬に生まれたばかりで、まだ若い。子作りを求める、 燃え立つような情欲とは縁遠い。れいむが浮き立った調子で日常のことをしゃべり、そ れにまりさが時折あいづちを打つというような、他愛のない時を過ごしただけだった。 孤独なまりさはれいむの話を聞くと、ほかのゆっくりが気づかなかったようなれいむ の苦労を汲んで、ぽつりと同情してくれた。 「ゆっくりは、顔じゃないんだぜ」 「れいむは顔よりも、心がすてきだと思うんだぜ」 またそんなまりさも、おのれの美貌におごらない、謙虚で正直なれいむに惹かれていっ た。 「おかあさんや妹たちに、いつまでもゆっくりしてほしいよ」 「まりさのことも、きっとみんなはわかってくれるよ!」 夏の間、ふたりはそうやって、穏やかに愛をはぐくんでいった。 秋に入ると、ゆっくりれいむは冬支度を始めた。 優しいながら芯のしっかりしたこのれいむは、生まれて一年もたたないうちから、一 人で越冬をすると決めていたのだ。 外敵の近づきにくいイバラのしげみの奥に穴を掘り、着々と食料を貯めて行くゆっく りれいむの姿に、最初は心配していた母れいむも、許可を出してくれた。 「しんぱいだけど、だいじょうぶそうだね! がんばってゆっくりしてね!」 「うん、れいむがんばるね!」 幼女期を過ぎて少女期に入ったばかりのれいむではあったが、必要な餌の量や穴の広 さを本能が教えてくれた。れいむは着々と準備を進めていった。 ひとつ、気がかりなのは、あの仲良くなったゆっくりまりさのことだった。れいむは まりさと一緒にいたかった。 だが、結婚の誘いを口にするには、れいむはまだまだ幼かった。 もしそんな誘いをしたならば、一冬をずっと同じ穴の中で過ごすことになる。まりさ と夜を過ごしたことは、いまだに一度もなかった。そこで何が起こるのか、少女の活発 な妄想力をもってしてもさすがに考えが及ばず、れいむは一人、顔を赤くして首を振る のだった。 ――まだはやい、まだはやいよ! もっとゆっくりなかよくなってから……! 冬ごもりの食料は莫大だから、簡単には移せない。つまり、思いつきで移住すること は出来ない。どちらにしろ、今年は一人で過ごすことが決定していた。 森の木が色づきだしてからというもの、まりさのほうも冬支度を始めているようだっ た。ときおり遊びにいったれいむは、石穴での彼女の冬支度が、それなりに順調に進ん でいるようだったので、ほっとした。 そのころのれいむは、まりさの視線を感じて小麦粉の頬を熱くすることが増えていた。 まりさも同じように考えてくれている――そんな確信があった。 季節が移りゆき、とうとう幻想郷に初雪が降ったある日。 いよいよ冬篭りの支度をすっかり整えたれいむは、銀世界に顔跡をつけていっさんに 走っていた。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆっ、ゆゆっ!」 今日は三ヵ月を越える冬ごもりを始める日。巣穴の入り口を閉じる前の、最後の逢瀬 だ。 石地の巣穴にたどり着くと、期待したとおり、その入り口はまだ開いていた。 「まりさ、いる?」 「れいむ? ゆっくりしていってね!」 聞き慣れた誘いの声。れいむはこの上ない喜びを覚えて、巣穴に入っていった。 「いよいよだね……!」 「ゆっくりと生き延びようね……!」 感無量で見つめあう顔と顔。自然の厳しさはお互いに知っている。うまくゆっくりで きなければ、再び会うことは出来ないかもしれない。 そんな切羽詰まった思いが、若いれいむに思い切ったことを口走らせた。 「あの……あのね、まりさ!」 「ゆっ?」 「もしこの冬篭りに成功したら……わたしとけっこんしてね!!」 白玉楼から飛び降りる思いでの大胆な告白。もちもちした頬を真っ赤に染めて、れい むはぎゅっとうつむく。 期待と不安に餡子が高鳴る。まりさはなんて答えるだろう。孤独なひとだから、断ら れるかもしれない。実は他に好きな人がいるかもしれない。乙女ゆっくりの想像力が暴 走しかけていく。 「ゆ……ゆぐ……」 のどに詰まったような不思議な声。おそるおそる声を上げると、まりさは顔を背けて むこうを向いている。 まりさを困らせてしまった――その思いに、れいむは足場が消えてなくなったような 絶望を覚える。やっぱり、自分の思い込みだったんだ。まりさは、ただの友達としか思っ てくれていなかったんだ……! 「ご、ごめんね、まりさ! 変なこと言っちゃった。……ゆっくりしていってね!」 最後の挨拶を残し、出て行こうとするれいむ。 涙を見られる前に。 ところがその後ろ髪が引っ張られる。ころんと転がって振り向いたれいむが見たのは、 真っ赤に染まって、怒っているようなまりさの顔。 「わ……わるかったよ、れいむ!」 「ゆっ?」 「な、なんて言っていいか、わからなかったんだぜ! うれしすぎて!」 言うが早いか、まりさは寄ってきた。柔らかな肌とふさふさの金髪がれいむの頬に押 し付けられる。 「まりさもだいすきだぜ! きっと、きっとけっこんしようね!」 「ゆ……ゆぅぅぅぅ!!」 歓喜の声がのどから漏れる。餡子脳をまたたく間に餡内麻薬が満たしていく。押し寄 せる幸福感、高まるヘヴン状態。 「ま、まりさ、うれしいよ……!」 「れいむ、ほんとにだいすきだぜ……!」 むにむにと頬をこすりつけ、何度も言葉を掛け合う。 こんなに幸せな思い出があれば、長い冬ごもりもぜんぜん苦しくない。少しの後悔も なくここを離れて、巣穴に戻ることが出来る。れいむはそう思った。 が――。 「ゆ、ゆく……ゆふ……」 「ゆぅ……ゆむぅ……」 押し付けた肌のぬくもりが、あまりに心地よすぎた。 愛しい人との距離が、あまりに近すぎた。 いつの間にか二人は言葉を忘れ、短い声だけを漏らして、体をゆすりあっていた。 そう、それは……二人がまだまだ早いと考えていた、愛の営みのきざし。 実際、二人はそんなことをするつもりは毛頭なかった。 ただただ、その心地よく温かい行為を止めたくなくて、じわじわと続けていただけな のだ。 しかし、いくら自覚がなくても、幼い餡子体に目覚めつつある官能は、そのまま消え てくれはしなかった。むしろ二人が押し合うのに合わせて、急速に高まりつつあった。 「ゆっゆっ……ゆっゆっゆぐっゆぐっ」 「ゆは、ゆは、ゆふ、ゆふ、ゆふぅぅ……ま、まりさぁ……へんだよぉ……」 頬を染め、とろんと溶けた目でつぶやくれいむ。 ふと相手を見れば、同じように快感に目を細め、唇をゆがめている。 そのまりさが、はっとれいむの視線に気づき、何か言おうとした。 「れ、れいむ……ゆっくりとやめようね……?」 彼女はまだ理性を残していた。今このタイミングで営みを始めたら、どんな悲劇的な 結末が待っているか、きちんと想像が出来た。 結末――それは恐ろしい光景だ。一人で巣穴に帰ったれいむが、腹の痛みを感じる。 そして何日かのあとに子供を産み落としてしまう。 一人用として準備された、巣穴の中で。 見詰め合ったまま、二人はわずかに逡巡した。 だがれいむは、しとやかで相手の望みを慮る性格のために、感じてしまった。 まりさがこらえている飢えを。芽吹きはじめた欲情を。 ――まりさがれいむをほしがってる……すっきりしたがってる……! それゆえに、れいむは揺すり続けた。 美しい頬をすりよせ、唇の端をまりさの唇に沿わせ……。 「まりさ、いいよ、まりさ……」 「ゆっ、れいむ、れいむ?」 「れいむはいいの。してほしいの。ねえ、すっきりしていってね……?」 魔法の森で一番とたたえられた、青いほど若く美しいゆくっりれいむの、健気な誘惑 ……。 それに、長い間孤独にさいなまれ、れいむを慕い続けていたまりさが、抗えるわけが なかった。 「れっ、れいむ、いいの、ほんとにいいの?」 「いいの、いいのぉ、まりさなら、ゆぅん、いいのぉっ……!」 まだ幼い、餡子皮もろくに厚くなっていない、青い果実のようなれいむがあえぐ。 「れいむっ、すきだよっ、れいむ、ほんとぉぉぉ!」 人の情けを知らずにたった一人で生き抜いてきた、飢えたまりさがむさぼる。 舌を伸ばしてべろべろと舐めあい、湿った頬をぐにぐにとすりつけ、野獣のように汁 まみれで愛し合う。若く未熟だといっても、いや、若く未熟だからこそ、二人の愛はと どまるところを知らなかった。 「ゆっ、ゆおっ、ゆふっ、ゆむぅっ♪ まりさっ、きもぢいい、ぎもぢいいよぉぉ!」 「れ゛いむ゛ッ、れい゛む゛っ、れ゛いむ゛ぅぅ、だいすきだよぉぉぉほぉぉ!」 「もっどっ、もっどじでっ、ぐるっ、ぐるっ、なにがぎぢゃぅぅぅぅ!!」 「まりざも、まりざもっ、れるっ、れるっ、なにかがれる゛ぅぅぅ!!」 ずくんずくんと押しつけるまりさの動きが最高に高まった瞬間、れいむは感じた。 じわじわぁぁっ……! と自分の中に染みとおってくる、まりさの愛のこもった熱い 波を……。 その途端、真っ白な閃光が丸い餡子体のすみずみまでも走りぬけ、れいむは我知らず に絶叫していた。 「すっきりーーー!」 「すっきりーーー!」 同時にまりさも叫び、柔らかい体をべったりとれいむに密着させたまま、ふるふると 硬直した。 白一色の野原の中、小さな穴倉で人知れず重なり合った二人の上に、新たな冬の使者 が音もなくはらはらと降り積もり始めた……。 ゆっくりれいむは枯れ草を敷き詰めた穴倉に、じっと座り込んでいた。 冬篭りを始めて一週間。――食料の消費は予想通りで、念入りにふさいだ入り口から は雪の一片も漏れてこず、冬篭りはすべて問題なく進んでいるようだった。 しかしれいむの顔は、心なしか青かった。 ――だいじょうぶ、だいじょうぶ! ゆっくりしてればいいの! 自分に言い聞かせつつも、思い返してしまうのは、あの日のことだ。 生まれて初めての衝動に押し流されるまま、自分の体のすべてを与え、恥ずかしい痴 態をさらしてまりさとひとつに溶け合った。それ自体は例えようもなくすばらしい愛の 出来事だった。 だが、終わったあとに残ったのは、取り返しのつかない愚行をしてしまったのではな いかという、巨大な不安――。 「れ、れいむ……」 おろおろとうろたえながら、まりさが何かを言おうとした。 「……こっちでゆっくりしていく? まりさはかまわないよ」 だが、出てきたのはこんな益体もない台詞だけ。もとよりまりさの巣穴にはまりさの 分の食料しかない。たとえまりさが身を投げ打ってくれたところで、来るべき事態の解 決にはならない。 れいむにまりさを責める気はなかった。あの流れの中で、自分は確かに、人生の分岐 点をこちらへと渡ったのだ。 一時の快楽に押し流されて……。 「ありがとう、まりさ。れいむはおうちにかえるね」 にっこりと笑って、れいむはそう言った。 まりさが好きだった。だから心配をかけたくなかった。 ただ、どうしたわけか、涙だけは目じりからぽろぽろとこぼれた。 「ゆっくりしていってね、まりさ。れいむはだいすきだったよ!」 「れ、れいむぅぅぅ……」 同じように涙を流し、何度も抱擁して、まりさは送り出してくれたのだった。 「春になったらむかえにいくからね! ぜったいいくからね!」 ……そんな声を背に、れいむは巣穴に帰ってきたのだ。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆんっ!」 ふるふると頭を振って、自分に活を入れる。 「ゆっくりできるよ、ゆっくりしてるよ!」 すべては杞憂なのだ。こうして座って、辛抱強く食料を食いつないでいけば、やがて は春が来るのだ。 そうして、ある暖かな一日に薄暗い穴の中で目を覚ますと、入り口を掘りあけてまり さが来てくれるはずなのだ。 「ゆっくりしすぎたぜ、れいむ!」 そうやって、微笑んで……。 ぐりゅ、と頭皮の上で何かが動いた。 「……!」 れいむは頭をふる。何度も何度も振る。 「ゆっくり、ゆっくりしていくよ……!」 聞くものとてない冬山のイバラの茂みの奥に、そんな小さな叫びが響く。 だが――。 運命の神は――。 二人の愛の結晶を、無慈悲にも――。 「ゆぐっ、ゆぐっ、ゆゆぎぃぃぃ……!」 吹雪の吹きすさぶ厳冬の一月。 分厚い雪に振り込められた巣穴の奥に、異様な光景があった。 それは膨れ上がったゆっくりれいむ。――ただ縦方向に伸びているだけでないのは、 その口の下にみちみちと開きつつある穴から、明白だ。 産道が穿たれつつある。 一歳に達しないゆっくりれいむが、枝をつけずに胎児を孕むのは、きわめて異例なこ とだ。だがこれは、彼女自身が引き起こしたことだった。 その原因は、れいむが己の妊娠を徹底的に否定し続けてきたことにあった。 まりさとのあの日から一週間を過ぎたあたりから、れいむの体調は確実に変化してい た。食欲が異様に増え、食べても食べても物足りない。頭がうずき、何かが生えつつあ るような感覚が湧いた。 頭から枝が生えたら、子供が実る。――その程度のことは、うぶなれいむでも知って いた。 「は、はえないでね! ゆっくりはえないでね!」 頭の上に少しでも何かが突き出そうになると、壁にこすり付けて削り落とした。 だがゆっくりの体の作りは、ゆっくりであるれいむ本人にも想像もつかない神秘を秘 めていた。 枝が生えなくなってほっとしていると、今度は十日過ぎから、腹の中に違和感を感じ るようになった。 みちみちみち……。 みちみちみち……。 腹が圧迫されていく。 内側から。 まるで新しい何かが形成されているかのように。 「ゆ、冬太りになってきちゃったよ!」 「ゆっくりしてるの、ゆっくり一人ですごすのぉぉ!!」 食料の食べすぎだ、運動不足だと自らをあざむいても、詮無いことだった。 茎を作って生まれ出ることのできなかった生命が、行き場をなくして腹の中に宿って しまったのだ。 以来、それは育ちに育ち、一ヵ月半が過ぎた今では、かつてのれいむ自身に匹敵する ような何者かが腹の中にいることは、明白になってしまった。 それが今――。 いよいよ胎児としての成熟を迎え、外の世界に生れ落ちようとしている。 ふくれあがり、中からミチミチと押し開かれる産道に、れいむは懸命に力を込める。 「だめっ、だめぇぇぇ……生まれちゃ、生ま゛れ゛ぢゃだめぇぇぇ……! 出だら゛死ん゛じゃう゛の゛お゛ぉぉぉぉ!!!」 かつて誰よりも美しかったまぁるいあごの線は、無様にふくれ、見る者見る者に舐め てみたいと思わせた滑らかな餅肌には、脂汗が玉のようにびっしり浮いている。 若く美しいゆっくりだったれいむが、今は腹の膨れた妊婦となって、おのれの恥ずか しい穴を必死に引き締めているのだから、グロテスクを通り越して滑稽ですらあった。 「ゆぎい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」 顔の下部に熱した金属棒を突っ込まれ、グリグリとこじ開けられるような壮絶な痛み が、れいむを苛む。れいむは歯を食いしばってそれに耐える。 最初のうちは外に出すまい、奥に戻してやろうという力みだったが、自然の巨大な力 の前に、そんな愚かな努力はたやすく圧潰した。今ではもう、腹の出口に宿る凶悪な痛 みの塊を、ただなんとか処理したいということしか、考えられない。 「ぎぎぎっぎゅぃいいぃいい! いだっいだっだっ、いだいよぉぉぉぉ!」 体内の餡子という餡子がマントルのように煮え返り、循環するような猛烈な苦痛が襲っ ている。その最悪の瞬間、れいむは痛みから逃れることしか考えていなかった。この痛 みをもたらしたすべての者を憎悪した。生まれつつある胎児自身、それを種つけたゆっ くりまりさ、種を受け入れた昔の自分、そしてそんな自分を世に送り出した母親までも を憎みぬいた。 「ゆっぐりじだいぃぃぃ! みんなみんなゆっくりじねぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 誰一人助けてくれるものもない、孤独な苦痛が最高に高まった瞬間―― きゅぅぅぅ……ぽんっ! 軽快な音とともに、一瞬で腹が軽くなった。たちまち、どっと音を立てそうな勢いで 安堵があふれ出し、れいむは至高の快楽に浸る。 「ゆっくりー!」 「ゅっ」 だが、彼女の安堵は、小さな小さなうめきを聞いた瞬間、絶望に転じた。 目を開ければ、薄暗い巣穴の床に、小さな丸いものが落ちている。 黒い帽子、濡れて波打つ金髪、ちょっぴり世をすねたような唇、まだ開いていないま ぶた……。 それは、愛したゆっくりまりさに生き写しの、自分の子供だった。 ――生まれてしまった……! ひたひたと押し寄せるその事実に、れいむは押しつぶされる。聡明な彼女には、この ことの帰結がはっきりと理解できた。 巣穴には一人分の食料しかない。 子供と二人では、間違いなく足りなくなる。 だから当然、今しなければいけないのは――間引き。 「……ゆ、ぐ、ぅ……」 それは子供を自らの手で殺すこと。大丈夫、生まれて間もない赤子はまだ世界のもの ではない。あちら側、死者の側の住人なのだ。殺すといっても、そちらへ送り返すだけ。 そう、これは「お帰し」なのだ――。 ゆっちゅりーだったか、あるいは他の誰かだったか。昔聞いたそんな理屈が、頭の中 でぐるぐると回った。 れいむはぶるぶるとおこりにかかったように震えながら、前へ進む。あれほどわが身 を痛めつけてくれたのに、子供の大きさは桃の実ほどもない。スイカ並みの大きさがあ る今の自分なら、のしかかるだけで片をつけることが出来る。 やるのだ。 やらねば。 やらなければ! ――と、そのとき目を開いた小さな子供が、きょろきょろと辺りを見回したかと思う と、輝く瞳にいっぱいの希望を浮かべて言った。 「ゆっくちちぇっちぇね!!!」 一撃だった。 それはれいむの脆い殺意を突き崩し、深い深い愛を呼び覚ますに十分な一撃だった。 幼い母親であるれいむの心に――幼いからこそ、純粋な愛がこんこんと湧き出した。 愛したまりさとの子供、自分の腹を痛めた子供だという思いが、あっという間に心を満 たした。 「ゆ゛っ……」 れいむは、その言葉を口にした。 「ゆっぐり、ぢでいっで、ねぇ……!!!」 そして滝のように涙を流し、わんわんと声を上げながら、赤ちゃんまりさに頬ずりし た。 「ゆっ? おかあたん、どうちたの? まりさがちゅいてるよ! 何もわからない幼いまりさが、早くもそんなことを言って、母に頬を擦り付けた。 母子はずっと一緒にゆっくり暮らした。 狭く暗い穴倉の中で、せいいっぱいゆっくりと……。 出産が済んだれいむは、いくらもたたないうちに、元のように丸く美しい体形を取り 戻した。子供と二人、彼女は毎日を楽しく暮らした。 子まりさも、満足しきっているようだった。 「おかーたん、ゆっくちおととにでたいよ!」 「おそとは寒いのよ。暖かくなったらね」 「おととにはどんなものがあるの?」 「きれいなお花や、可愛いちょうちょや、すてきなまりさかあさんがいるのよ」 「ゆっ、おかーたんがもうひとりいるの? まりさ、たのしみだよ!」 子まりさの幼すぎる餡子脳は、結末をまったく想像できなかった。 彼女はただ、外敵のいない快適な穴倉で、寝てもさめてもそばにいてくれる、若く美 しい母親と、壁一杯に積まれたたっぷりのごちそうに囲まれ、明るく広い未来を想像し て、至福のときを過ごしていた。 「ゆぅ・ゆ・ゆー ゆぅ・ゆ・ゆー ゆーゆゆぅゆ ゆーゆぅ……」 柔らかなアルトの子守唄を聴きながら寝かしつけられると、子まりさはついついこん なことを言ってしまうのだった。 「おかーたん」 「なぁに? まりさ」 「まりさ、とってもちあわちぇ!」 ちゅっ、と頬にキスして目を閉じる娘を、れいむはこの上なく幸せな顔で、だが滂沱 の涙を流しつつ、見守るのだった。 時が流れ、日々が過ぎていった。吹雪の音は収まることがなかったが、壁に積まれた 食料は少しずつ減っていった。 れいむにはひとつだけ迷いがあった。それは自分を犠牲にしてこの子を助けようかど うかということ。自ら招いた過ちである以上、そうすることもれいむは真剣に考えた。 だが、出た結論は、そうしたくないし、そうするべきではないと言うものだった。 母の肉体を食い荒らして育った娘が、幸せになれるだろうか……。 恋人の肉体を食い荒らして巣穴から出てきた娘を、母まりさが許してくれるだろうか ……。 そう考えれば、答えはとても簡単であるような気がした。 三月、冬の終わりを告げる最後の地吹雪が巣穴をとどろかしているころ。 食べるものが何一つなくなった、空虚な巣穴の中で、頬がこけ、げっそりと衰弱した れいむ親子が、夢うつつの境をさまよっていた。 「ゆぅ……ゆぅ……」 「ゅぅ……ゅぅ……」 寄り添った二人は、もはや苦鳴すら漏らしていなかった。おなかがちゅいた、と子ま りさが文句を言っていたのも、すでに一週間も前のことだった。 今では細い息を漏らしながら、迫り来る死を待っているだけだった。 「ゆぅ……ゆぅ……ゆっ・ぐ」 薄れる意識を漠然とたもっていたれいむは、ある一瞬、確かに自分の生が途切れたの を感じた。人間にたとえれば、弱りきった心臓が短い間、停止したというところだろう か。ともかく、死はすぐそこまで迫っているとわかった。 ――れいむ、しぬんだ……。 ――がんばったけど、ここで死んじゃうんだ……。 ――おかあさん、ごめん。まりさ、ごめん。子まりさ、ほんとにごめん……。 いつ死んでもおかしくない、と思った瞬間、れいむは細い決意を抱いた。あれほど考 え抜いて決めたことなのに、土壇場で再び母性本能がうずきだしていた。 「まりさ……まりさ」 「ゅぅ……ゅ?」 「今から、ごはんをあげるからね……いっぱいたべて、ゆっくりしてね……」 そう言って、子まりさから離れ、壁際の石へよろよろと這いずっていった。石の角で 自らを切り裂き、餡子を与えるつもりだった。 だが、その作業を始めて痛みに顔をしかめていると、ちっちゃな子まりさがゆむゆむ と必死にはいずってきて、細い声で取りすがった。 「おかーた、おかーたん、いたいいたいしちゃ、だめ!」 「いいのよ、まりさ……」 「だめなの、まりさはおかーたんがちゅきなの! おかーたんいっしょにいて!」 餡子の味を知らないから、そんなことを言うのだろう。いったん餡子を食わせてやれ ば、我を忘れてむさぼるだろう。 そうとわかってはいても、れいむは愛しいわが子を、泣かせたくなかった。 れいむは石から離れた。そしてまりさにゆっくりと寄り添って、歌い始めた。 「ゆぅ・ゆ・ゆー ゆぅ・ゆ・ゆー ゆーゆゆぅゆ ゆーゆぅ……」 眠れ眠れ母の胸に。 歌の歌詞そのまま、眠るように子まりさは静かになった。 ほどなくその静かな歌も途切れ、あとには吹雪のとどろきが残った。 汗ばむほどの陽気に包まれ、根雪が盛大に溶け流れている。 四月。魔法の森には急激な春が訪れ、すべての生き物たちがいっせいに目覚めていた。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆっくゆっく!」 雪解けの地面を、全身泥まみれになりながら駆けていくゆっくりがいる。 黒い帽子のゆっくりまりさだ。もう五日も前から巣穴を防ぐ石版をぐいぐいと押し続 け、今日やっと、上に乗っている雪が溶けたために出てこられたのだった。 「ゆっくり、ゆっくりーっ!」 それは訪れた春を歌い上げる歓喜の声であるとともに、愛する人に聞かせる呼びかけ の声だ。皮よ破れよ帽子よ落ちよとばかりに、出せる限りの速度でまりさは跳ね飛んで いく。 イバラの茂みは、秋に記憶したとおりの場所にあった。そこは雪がまだ溶けていなかっ たが、そんなことは問題ではなかった。まりさの頭の中は、四ヶ月前に激しく愛し合っ た、美しく愛らしいゆっくりれいむのことだけが占めていた。 ――れいむ、れいむ! いま掘り出してあげるぜ! 冷たい雪を口にくわえて横手へ吐き出しながら、まりさは冬ごもりの間に数え切れな いほど繰り返した至福の想像を、再び頭の中で組み立てる。 雪をどけて扉を崩せば、待っていたれいむが涙ながらに飛び出してくるはずだ。 いや、慎み深いれいむのことだから、久しぶりの出会いにためらって、もじもじして いるかもしれない。 まさか眠っているってことはないはずだ! どれにしろ、まりさの言うべきことはひとつだけのはずだった。 ゆっくりしていってね! これからずぅっとずうっと、死ぬまで一緒にゆっくりしようね……! ゴソッ、と雪が抜けた。巣穴を閉ざす石と枝が現れた。 「れいむ! まりさだよ、ゆっくりしないで来てあげたよ!」 石と枝をくわえることすらもどかしく、もぞもぞと顔を突っ込んでまりさは入り口を 掘り抜いた。ずぼっと穴が貫通し、湿った巣穴の匂い、懐かしいれいむの甘い香りが、 ふわりと漂いだしてきた。 「れいむ!」 まりさは三日、遅かった。 ========================================================================= YT このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1068.html
「…せッ!…せッ!…せッ!」 暗闇の中円周上に配置された篝火の光の中心には四方を杭に結わえ付けられたロープで囲まれた空間だけが浮かぶ 周囲をぼうっと篝火に照らされる空間を熱狂しながら凝視する人間の顔だけが浮き上がらっせ、その光景は太古の神を祀る儀式を思わせる 「殺せッ!殺せッ!殺せッ!」 老いも若きも男も女もが狂ったように同じ言葉を繰り返す 人々の視線の先には互いの肉を食み、血を啜り合いながら殺しあう2匹の獣 …ならぬゆっくりの姿があった 里の野外に特設された即席のリングの中には1匹のゆっくりまりさとゆっくりフランが向かい合っている ゆっくりまりさは目と口の部分に穴が開いた底部以外顔全体を覆う派手なマスクを被っており、 そのマスクのそこらかしこはフランに切り裂かれたのか無残にも体までにもその裂傷は達して致命傷ではない物の餡がポタリポタリと垂れて 大きくその体を伸縮させて息をついている 方やゆっくりフランは素顔で、顔に自分の傷から漏れた餡とまりさの餡で汚れながらも、 その目には狂気の色が宿り口を大きく開いてこびりつく餡をなめると笑みを浮かべた ルチャゆっくり 最近考案されたゆっくりを使った娯楽のひとつ、早い話がゆっくりを使った賭け格闘技である。 リングで戦うゆっくりはゆっくりドールと呼ばれ相手が戦意を失うか・気絶するまで行われる… しかしゆっくりは本来温厚で臆病な性格なので捕食種を除け自発的に戦うことはない だが、彼らやその親しい者の危機には勇敢に立ち向かうケースもある その事から人間が野生の比較的体格がいいゆっくりを見つけると家族や親友を攫いそれを人質として戦いに赴かせるのである 場合によっては無理やり子供を孕ませてそれを利用する 負けたり・無様な試合をすれば人質の命は主人の気分ひとつ次第 故に戦うゆっくり達に躊躇いはない ……常にガチ勝負且つゆっくり特有の肉体の脆弱さもあいまって死者は耐える事はない 死の恐怖に抗い勝ち続けるゆっくりにはマスクが与えられ、そして更に勝ちぬいたマスクゆっくりは自由を勝ち取る事ができる マスクは数多の同族の屍を踏み越えた強者の証、それを脱ぐ時は敗北を意味する マスクを剥がれたゆっくりはそのマスクを捨て新たにマスクを得るまで再び戦いを続けなくてはならない ゆっくりドールにとってマスクは頭の飾りや帽子以上の価値、命そのもの ゆっくり達にとっては語源のルチャリブレよろしく自由を勝ち取るための戦いであるのだ このまりさはルチャゆっくりでは現在一番人気の花形ゆっくりドール。 デビュー以来負け知らずで特に華麗な空中技に定評がある ルチャゆっくりの中では殿堂入り確実の生ける伝説ゆっくりドールである かたやフランのほうは中堅クラスであるものの高い戦闘力と凶暴性で最近のし上がって来た実力派、決して楽勝な相手とは言い難い 今現在餡子が漏れているマスクまりさは体力的にも長期戦は不利、しかしフランは警戒を奇襲し徐々にコーナーへ追い詰めて行く いくら手負いとてマスク持ちは百戦錬磨の猛者、迂闊な攻撃は仕掛けない辺りフランも並みのゆっくりドールではない マスクまりさがコーナーポストに背をつきの呼吸が乱れかと思うとと体を僅かに傾けるのを見るや雷のごとく飛び掛った 「ますくとられてゆっくりしね――ッ!」 だがマスクまりさは睨み付けたまま動かない。 コーナーに居る以上フランの突進を下手に回避しようとしても逃げれず、リング外に逃げようとしてもその隙に無防備な部分を晒すだけという事を知っている。 そしてコンマ一秒の世界のタイミングで避ける事を決意した マスクまりさは息一つすると極限まで集中する。 一つ息を吐くと空気を震わす観客の歓声がフッと消え、今まで気にならなかった生暖かい風の張り付く感触を感じ、 目の前に向けられたフランの鋭い牙がスローモーションビデオを見てるかのごとくゆっくりと近づく 5センチ... 3センチ... 2センチ... 1センチ... フランは勝利を確信していた 牙は確実に柔らかい皮膚を突き破り餡を抉った後奴は豚のような悲鳴を上げるだろうと カチン!! だがフラン確信とは裏腹に牙のぶつかる音だけが響いた 「うっ!?うーっ!?」 いつの間にか眼前のまりさは霞のごとく消えていた まりさの見せた隙はフェイクだったのだ 後悔したところでもう遅い 次の瞬間頭部に強烈な衝撃が走り地面に叩きつけられると目の前が餡で真っ黒に染まり何がおきたか理解できぬまま事切れた フランだったものから飛び出した餡子の山からムクりとマスクまりさが立ち上がる お互いの鎬を極限まで削る我慢比べにまりさは勝ったのだ ――すたーだすとればりぇ マスクまりさの得意技の一つ 敵の攻撃を極限までひきつけてコンマ一秒のタイミングで敵の頭上に飛び上がりそのまま全体重をかけて敵を地面に叩きつける その一連の動作は流星の如く華麗でそれ見た誰もが魅了される程の高難度の空中技 「ウィナーッ!エルゥ――ッマリィーサァ――!!」 審判が勝者の名前を告げると観客席からは悲鳴のような歓声と怒声が起き周囲に紙吹雪が舞った 「まりさー!よくやったぞ!」 一人の若い男がロープを潜りリングにうつ伏せに寝転がっているまりさの元へ駆け寄る 「おにー…さん…まりさ…がんば…たよ」 ずり落ちた帽子を力なく少しだけ挙げて顔半分をセコンドの男のほうに向けるとにこりと微笑んだ 「ああ…頑張ったとも!後10勝だ!!後10勝てばお前は自由になれるんだぞ」 「うん…でも…まり…さだめ…かも…」 「何言ってんだ怪我はたいした事ないぞ!休めばすぐ治るからな!」 男がまりさを優しく抱きかかえて顔を見るとハッとしたと表情を見せると途端に真っ青になった 何とまりさの左目を両瞼が縦にぱっくり切れ眼球から透明な液が漏れている すたーだすとればりぇを決める為に跳躍した際、満身創痍のまりさはタイミングが少し遅れたため運悪くフランの牙が目を掠ってしまったのだ 「もう…まりさは…あかちゃんのために…たたかえないの…?」 後10回とはいえ戦う相手はどれも強敵ぞろい、片目で戦うには余りにも手に負えなさ過ぎる さりとて傷が癒えても片目に慣れるまでまでじっくり休養する時間などまりさには与えられない 「あ…今すぐ治療するからな!だからじっとしてろ!!」 男はまりさをマスクを丁寧に脱がし、しっかりとまりさを抱えると揺れぬ様急ぎ足で幕舎の中へ入るとベッドにおろして くすり箱をひっくり返すと治療を施したが潰れた目はどうにもならなかった 「畜生…なんてことだ…」 男がまりさを見下ろして項垂れていると幕舎の中に恰幅のいい中年の男が不機嫌な顔をしながら入ってきた 「全く何てことだ!あれだけ投資してやったのにこれからって時にしくじるとはなぁ!!」 どうやらまりさの主人はこの人物らしい 「お…御館様、こいつは片目をやられだけです再起不能になった訳じゃないんです!あと十勝なんです!!どうか見捨てないでやってください!!!」 「饅頭ごときに情が移ったのか?動ける動けねぇじゃねぇよ!確実に勝てるようなじゃなきゃ駄目に決まってんだろうが! 怪我をしてもう使い物にならんなんて知れたら商品価値は無いも同然なんだよ!」 中年男は腕を組むと幕の中を言ったりきたりしながらブツブツと何かをつぶやている 「そうだ…コイツとかなことの試合を組もう。目は形だけ直しとけ、眼帯とか包帯はつけるな。 伝説の終焉って売り込みでコイツには華々しく最後の花道を飾らせてやろう!次の試合だ!わかったな!」 そう捲くし立てると中年男は近くにあった水瓶をけり倒してがっくりと崩れ落ちる若い男を尻目に出て行った ふかんぜんねんしょー 複数の重賞を勝利した競走馬達もその最後は決して安らかじゃないんだってね byおれまりさとかイワレタ人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4216.html
「む~しゃ♪む~しゃ♪しあわせ~♪」 「おいしいね!ありす!」 「まりさ!ご飯を食べたら一緒にひなたぼっこしましょうね?」 ある春の日の森の中 日に照らされた野原で2匹のゆっくりが仲良く食事を取っていた。 とても楽しそうにニコニコとお喋りをしながら草を食べる2匹は 誰が見ても幸せそうに見えるだろう。 「ゆふー!お腹いっぱいだよ!幸せー!」 ご飯を食べて直ぐにころんと野原に横になる二匹。 彼等の属する群れは(といってもたった4匹だけだが) いつもこの様なゆっくりした生活を送っている。 日が昇ってからゆっくり外に出て、 その辺りに生えている雑草をついばみ、 お腹が膨れたら横になってお昼寝をする。 余りにも無防備でゆっくりとしたその姿は 獰猛な野生動物でさえゆっくりさせてしまう。 そしてお昼過ぎに起きては4匹で遊んで、 夕方になったらまた巣で食べる為のご飯を口の中や帽子の中に詰めて 巣へと持ち帰り、身を寄せ合って眠るのだ。 どこまでも争いの無い平和な森の中。 4匹のゆっくりは皆、幸せ一杯に暮らし、 どんな時でもゆっくりしていた。 只一つの例外を除いて 怖い人間とゆっくりするには 古緑 「ーゆッ!ありす、ありす、起きてね!」 「ゆ!もう起きてるわまりさ!」 何かカサカサと物音を聞きつけた2匹が 全くゆっくりせずにお昼寝から目を覚まし、 全くゆっくりせずに樹の陰まで跳ねて隠れる。 樹の陰に隠れたその2匹の視線の先には 30歳程の背の高い、籠を背負った人間の姿。 「やっぱちょっと探したぐらいじゃ 見つからないモンだな…」 そう言って男は腕を組んで大きく溜め息を吐いた。 籠を背負った人間の目的は山菜探し。 しかし、他所の村の人間から聞いた『ゆっくり』という 人の言葉を解する生物を山菜探しのついでに一目見たくなった男は 少し山奥の方まで探索しに来たのだ。 「(やっぱり人間さんだね…)」 「(しー、まりさ、静かに ゆっくり出来なくなっちゃうわよ…)」 樹の陰にその身を隠して男を覗く二匹のゆっくりは ゆっくりらしからぬ小声で話し合う。 かつてこの群れがここでは無い、違う山に居た時 ある事件から『人間はゆっくり出来ない』と言う事を思い知らされた結果 群れの4匹は人間に近寄らなくなり、 新しい住処も人の姿の見られない山の中に作られた。 この群れと人との交流は今までのところ全く無い。 「しょうがねーか…帰ろっと…」 そう独り言を言って引き返していく男を4つの目で見つめながら 2匹のゆっくりは音を立てない様にそろそろと樹の陰から這って出ていった。 「「(そろーり…そろーり…)」」 「人間さん、もう行ったのかな…?」 「(しー!まりさ、まだ油断しちゃ駄目よ!)」 「(ご、ごめん…)」 2匹のゆっくりは念入りに、 男が見えなくなるぐらい、ゆっくりとその背中を見送ると 「誰もいないよ!またゆっくりしようね!」 「れいむとぱちぇも起こしてきて 皆でゆっくり大会しましょ!」 念には念を入れて、 場所を移してまた遊び始めた。 あの男は決して、ゆっくりに対して悪意を持って来たなんて事は無かったし この二匹のゆっくりも、あの男が自分達を殺しに来たとまでは考えていなかった。 だが、それでもゆっくり達は今の群れの皆で平和に暮らせていれば十分幸せだし、 この群れの4匹にとっては今でも人間と接触する事は恐怖でしかない。 「皆でず~っとゆっくりしようね!」 「明日も、明後日もず~っとゆっくりしようね!」 このゆっくり達は今のまま4匹だけの群れで、 今のままこの野原で暮らすだけで十分幸せなのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「父ちゃん!ゆっくりは見つかった?」 「あーいや、駄目だな、 諦めな、多分あの山にはいねぇよ」 「ちぇー…」 「まぁそうむくれんな そういや○○んトコの犬が子犬産んだって言うからよ 一匹貰って来てやるよ!欲しがってたろ?」 「本当!?飼っても良いの!? やったぁ!流石お父さん!!」 「世話はちゃんとお前がやれよ」 「あぁアンタ!帰ってたの! もう風呂出来てっから ○○と一緒にちゃっちゃと入ってきちまいなよ」 「ただいまカーちゃん! ま、取り敢えず風呂入ろうぜ お前も入りな」 人もまた、 ゆっくりがいなくても十分幸せだった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ しかし4匹のゆっくり達の 不満も不安も争いも無い、平和なゆっくり達の群れはある日 唐突にその姿を変える事になった。 「「「ゆっゆゆー!」」」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆ!何なの?何なの?」 ある晴れた日。 騒がしい音によって4匹のゆっくりはお昼寝から起こされた。 起きた4匹のゆっくりの視線の先には ゆっくりプレイスである野原の中で歓喜の声を上げる、20数匹のゆっくり達。 その種はれいむ、まりさ、ありす、みょん、他様々。 冒頭のありすとまりさ、そしてぱちゅりーとれいむの4匹だけでゆっくりしていた このゆっくりプレイスに、他所の山から急に20数匹程のゆっくりの群れがやって来たのだ。 「ゆー!ぱちぇ! ここはすごいゆっくりぷれいすだね! ここをまりさ達のゆっくりぷれいすにするよ!」 新しくこの群れに来た大きなゆっくりまりさが 元々のこの小さな群れのリーダー的存在であったぱちゅりーに向かってそう言った。 先住者に対して礼儀も遠慮もないその台詞から 『どんな群れ』なのかは聡明なぱちゅりーにはある程度想像がついた。 「む…むきゅぅ…」 このぱちゅりー、目立たないがよく見ると頬に酷い傷痕がある。 ぱちゅりーだけでは無く、まりさやれいむ、ありすの4匹のゆっくりは かつて人間に群れごと殺されかけた過去を持ち、 生き残った4匹で命からがらこの山へと逃げてきた末に、群れを築いたのだ。 『人とはゆっくり出来ない』と言う4匹の考えはこの過去の経験から来るものだった。 「わ…分かったわ…ゆっくりしていってね…」 まるで脅迫を受けた様に怯えた表情で ぱちゅりーは大きなゆっくりまりさに向かって承諾の返事を返した。 実際にこの群れに反抗しても無駄だと確信しての返事だったが、これは正解だった。 反抗しようものならそれを上回る反撃が待っていた事だろう。 その返事を聞いた大きなゆっくりまりさは満足そうに頷くと 周りのゆっくりに向かって次の様に言った。 「やったね皆!これでゆっくり出来るよ!」 「「「ゆゆ~ん♪」」」 「まずは住むのに良さそうな巣を探そうね!! 今日のご飯はぱちゅりー達から御馳走になろうね!」 新しく来た群れのゆっくり達がそれぞれに散って行き、 住み着くのに良さげな穴を探して行く。 その様を不安げに眺める4匹のゆっくり。 「ぱちぇ、コレは一大事だよ…」 「分かってるわ…」 人に恐怖を抱く4匹は皆、この事態に対して不安を抱いていた。 なんせたった4匹だったぱちゅりー達の群れは 一挙に30匹近くの群れに膨れ上がったのだ。 こんなに急に群れの人数が増えるとさぞ目立つ事だろう。 かつて自分達の生まれ育った群れを滅ぼした人間に見つかる可能性が増してしまう。 不安になったぱちゅりーは、大きなゆっくりまりさに怯えてはいたが 新しくなるであろう環境に直ぐに適応出来る様にゆっくりまりさに対して質問をする。 「ねぇまりさ…どうしてあっちの山からこっちに来たの? ゆっくり教えてね?もしかして…」 「ゆ?そんなの決まってるよ! ご飯が少なっちゃったんだよ! あっちのお山さんはゆっくり出来ないね! それに人間さんまで意地悪するんだよ!」 どうやら群れに新しく来たゆっくり達は あまり物事について深く考える事はしない様だった。 そして『ゆっくりしてない』、そう4匹は感じていた。 この時、今度は『人間』と言う言葉を聞きつけて 不安になったゆっくりれいむが大きなゆっくりまりさに向かって質問しようとした。 「ねぇ、『人間さんの意地悪』って…」 「とにかく! あんなゆっくり出来ないお山さんになんて居られなかったんだよ! …ゆ!あそこは良さそうな穴だね! ここをまりさのゆっくりプレイスにするよ!」 疲れてお喋りが面倒になったのか、大きなゆっくりまりさは強引に話を打ち切り 近くにある最も大きな穴に向かって跳ねて行った。 そこはぱちゅりーとれいむのお家。 初めてこのゆっくりプレイスに辿り着いて皆で家を探した時、 まりさとありすが見つけたお家なのに まず体の弱いぱちゅりーにと、譲ってくれた大事なお家だった。 「むきゅぅ!駄目よまりさ! そこはぱちゅとれいむのお家なのよ!」 「ゆ?何言ってるの? まりさが見つけたんだからここはまりさのお家だよ? ぱちゅりーは馬鹿なの?」 「…むきゅぅ~……」 反抗しようにも、どう見てもこのゆっくりまりさは 自分達よりも体格も大きいし、また新しく来た群れの数も多い。 それに元々この群れにいた4匹のゆっくり達は皆気が弱く、 戦いには向かない性格だった。 結局、争いなんてゆっくり出来ない事は真っ平御免な4匹は 新しく来たこの大きなゆっくりまりさに群れの主導権を任せ、 暫く様子を見る事にした。 この時点で4匹の頭の中には『群れを出よう』等という考えは無かった。 なにせあの日、人間から命からがら逃げ出した先で ようやく見つけたゆっくりプレイス、4匹の新しいゆん生の始まりの地。 見捨てるには愛着を持ち過ぎてしまっていたのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 幸運な事にぱちゅりー達が思っていたよりも 新しい群れのゆっくり達は身勝手では無かった。 暫くの間はぱちゅりー達にも不満は無く、ゆっくり出来ていた。 だがやはり先住者と余所者との混じり合の中で ゆっくり間の違いはあらゆる所で生じてしまう。 その中で最も目立ったものは食生活のギャップだった。 「ぱちゅ達はいつもそのご飯を食べてるね! そんなのでゆっくり出来てるの?」 「むきゅ…?この草さんは美味しいのよ?」 「あんまり美味しくないよ… この辺のご飯はゆっくり出来ないよ!」 「あっちで採れたご飯は もっとゆっくり出来たのにね!」 4匹が新しく来た群れに対して感じた、自分達との最も大きな違い。 それは新しく来た皆は揃ってグルメな事だった。 新しく来たゆっくり達は この辺の草を食べる事はせず、美味しい虫や花ばかりを食べている。 しかしそれらの美味しい物を食べても尚、彼等は不満そうにしていた。 元々の群れのれいむやまりさは不思議に思っていた。 草は美味しいし、滅多に食べられないけど花や虫なんてもっと美味しいのに、と。 「………」 しかしぱちぇとありすは薄々感づいていた。 彼等の求めている物に。 新しく来たゆっくり達はかつての生活の中で『あれ』を食べていたのではないかと。 ぱちゅりー達の嫌な予感が的中するのは それから少しゆっくりしてからの事だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 風の強い日だった。 新しいゆっくり達が来てから3週間程経ち、 段々と新しい群れにも馴染み始めてきた頃。 暮れて行く太陽の下、ぱちゅりーはゆっくりしながら 大きなゆっくりまりさがやけに嬉しそうに野原に跳ねて来るのを見た。 「ゆゆー!皆!見つけて来たよ! ちょっと遠かったけど、この辺にもあったよ! ゆっくり出来るご飯だよ!」 「………?」 そう言って狩り(元々の群れには無かった言葉)をして来た 現リーダーであるゆっくりまりさがその帽子の中から出したもの。 「ほらこれ! 久しぶりのゆっくり出来る美味しいご飯だよ!」 「む”む”ぎゅう”う”ぅ”ぅ”!!?」 大きなまりさが帽子から出したそれを見て ぱちゅりーは少量の中身と共に驚愕の悲鳴をその口から吐き出した。 まりさが嬉しそうに持ってきた物は、かつて見た人間の主食である野菜。 食べると非情にゆっくり出来ると言われているご飯だが、 コレは人間の食べ物であり、人間はこれしか食べない。 そしてこれを自分達が食べると 食い扶持を減らされた事に腹を立てた人間達が自分達を皆殺しに来る。 つまり、美味しいご飯だが これを群れの誰かが食べ続けると人間が自分達を滅ぼしに来る悪魔の植物。 そういう災厄を呼ぶ植物だとぱちゅりーは認識していた。 (人間達がぱちゅりー達4匹の群れを滅ぼしに来たのは 群れの中の一部のゆっくりがこの植物を何度も何度も人間の近くから取って来たからだと ぱちゅりー達は知っている) 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~!」」 「うっめコレめっちゃうっめ!まじぱねぇ!」 呆然とその災厄の植物を食べ始める皆を眺める4匹のゆっくり達。 この4匹は決してその植物に手をつけよう等とは考えない。 かつてそれを食べた仲間のゆっくり達が殺された過去の記憶が それを食べる事を拒否するのだ。 そうとも知らずに野菜を頬一杯に詰め込んだ大きなゆっくりまりさは ぱちゅりー達に向かってニコニコと笑いながら言った。 「ゆ?どうしたのぱちゅ? れいむも、まりさも、ありすも、 遠慮しないで食べて良いよ! コレは美味しい草の在処がまた見つかったお祝いだよ!」 「「これからはずっとゆっくり出来るよ!」」 草や虫を食べてる時にも見せない笑顔を見せながら群れの皆はそう言った。 『これからはずっと』 これからはずっとそれを食べるつもりなの? その災厄の植物を。 ぱちゅりーは新しく来た群れのゆっくり達の嬉しそうな食事風景を 虚ろな表情で眺めながら気を失い、ころんと横に転がった。 『む~しゃ♪む~しゃ♪しわせー♪』  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「む…きゅ…むきゅぅ…」 「ぱ…ぱちゅ…しっかりしてね…? ゆっくり気を確かにね…?」 元々の群れの3匹が失神したぱちゅりーを巣まで運んでいく。 この3匹は皆、もうここには居られない事を確信していた。 直ぐに、とは言わないがやがて人間達はここに来るだろう。 あの日の様にー 『だずげで!!許じでぇ”え”ぇえぇえ!!』 『喧しいんだよゴミ虫が 群れの在処まで案内すりゃ助けてやるっていってんだろうが』 何かしら?騒々しいわね… れいむ、ゆっくり起きてね?もうお昼よ? 『ゆゆぅ…』 『ごごをまっずぐだよ”!!』 『おぉ、アレか! オイ皆!見つかったぞ!』 むきゅ?人間さん?ゆっくりしていってね! ほられいむ、挨拶しなさい、お客さんよ 『ゆゆー!ゆっくりしていってねー!』 人間さんが群れに来るなんて初めてだわ! 遠慮せずにゆっくりしていってね! ねぇ、人間さんはー 『…フン、じゃあな金髪饅頭 お務めごくろーさん』 『ゆぴ』 …む…きゅ…?まりさ…? 『……ゆ?まりさお姉ちゃん…?』 『これ以上俺等の食い扶持を減らされちゃたまんねーんでな 悪く思うなよ』 ぱちゅりーの夢の中、今にも降り出しそうな曇り空の下。 目の前に広がる光景。人間の足の下のもの。 『ゆっくり出来るご飯を見つけたんだぜ』と自慢していたまりさだったもの。 人間に向かって命乞いした末に群れを売って結局殺されたまりさ。 そして男の脚と脚の間から見える、次々に殺されていくかつての仲間達。 ゆっくりぱちゅりーは夢の中でうなされながら その日の光景を再度見ていた。 そして夢の中の場面は変わり今の群れの野原。 あの日の様に群れに来た人間が、あのリーダーまりさを野原に放り投て踏みつぶす。 そして一人、また一人と殺される群れの皆、壊されるお家。 『ありす!!まりさぁああぁ!!ゆっぐりじで!!ゆっぐりじでいっでぇ!!』 『逃げでばちゅりぃ!!逃げでええぇぇえ!!』 ーーそして幼馴染みのまりさやありすまで踏みつぶした 人間達の無表情な目が、自分に向いたかと思うと 大きな足の裏が自分の帽子に向かってゆっくりとーー 「む”ぎゅゅうううぅぅうぅぅ!!!」 「ぱちゅ!?大丈夫!? ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「む…きゅ…」 ぱちゅりーが悪夢から目覚めると 体には何枚もの葉っぱが掛けられており、子供の頃より共に育ってきた皆が 心配そうにぱちゅりーの顔を覗き込んでいた。 「ぱちゅ…?起きたの…? ゆっくり出来なくなっちゃったよ…」 ゆっくりまりさが悲しそうな顔でぱちゅりーに向かって唐突に言った。 それは何もかも省略した台詞だったが、 ぱちゅりーにも、他の2匹にもその言葉の意味は容易に理解出来た。 皆あのリーダーまりさが持ってきたものを見て、同じ危機感を覚えたのだ。 ぱちゅりーはそれを聞いて、迷う事無く決断した。 あの悪夢を正夢にしたくない。 それは何よりも優先させるべき心からの願いだった。 「分かってるわ…皆、群れを出るわよ…」 「…ゆん、ぱちゅもそう言うと思ってたよ」 「残念だけどここではもうゆっくり出来ないわね…」 「他にもゆっくり出来るところはあるよ! 頑張って皆で探そうね!」 4匹の心は通じ合っており、誰もNOは言わない。 同じ環境で育ち、同じ地獄を見て来た仲間達なのだから。 恥ずかしがりやで皆と中々打ち解けなかった、でも本当は優しいありす。 社交的な性格でこれまでずっと皆を笑わせてくれたまりさ。 前向きな性格でいつも自分を元気づけてくれたれいむ。 その皆で必死に探し出したゆっくりプレイス。 捨てるのは余りに惜しいけど命には代えられない。 あの日の惨劇を繰り返すわけにはいかない。 「また、皆でゆっくり探しましょう… ぱちゅ達の、本当のゆっくりプレイスを!」 「「「ゆっくり頑張るよ!!」」」 次の日の朝、ぱちゅりー達4匹は 新しく来た群れの皆とも相談する事無く、 ひっそりと群れを出て行った。 かつて、ぱちゅりーはありすと一緒に『話題のご飯』を食べに行った際に 畑の近くで、野菜を持ち上げている人間の姿を見た事があった。 『人間もあそこに生えているご飯を食べるのね』 二匹がそんな感想を抱きながら人間を眺めていると、 その齧られた野菜を見た瞬間、人間が見た事も無い様な怖い顔に変わったのを見て 怖くなったぱちゅりーとありすは群れへと引き返し、 あそこに行くのを辞める様に皆に説得しようとした事があったが、それは徒労に終わった。 群れの皆にとって、ゆっくり出来るものが近くにあるのに我慢する道理は無い。 それはきっとリーダーまりさ達の群れも同じ。 ぱちゅりー達はあの草に魅入られたゆっくり達に 何を言っても無駄だと知っていたのだ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ゆゆー?ぱちゅ達がいないよ?」 「またお昼寝でもしてるんだよ! そんな事よりゆっくり狩りに行こうね!」 それから数日が過ぎ、群れの皆はぱちゅりー達4匹が居なくなった事に気付くが そんな事には全く気にせずにまた人里まで降りて行く。 だが、群れのゆっくり達は気付いていなかった。 段々と自分達の群れの数が減っていっている事に。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ぱちゅりー達が新しいゆっくりプレイスを探し出したのは 群れを捨ててから僅か4日後の事だった。 「ゆぅ…ゆぅ…」 「頑張ってねれいむ!きっともう少しでゆっくり出来るよ!」 傷つき、消耗し、もう跳ねるのも辛そうに眉を垂らすゆっくりれいむ。 それを励ます帽子無しのゆっくりまりさ。 4匹はもう満身創痍。 体力は既に限界を迎えつつあった。 「ごめんね…まりさ、ありす、ごめんなさい…」 「いいよぱちゅ!ゆっくりしていってね!」 そして誰よりも、 元々あまり運動に向かないぱちゅりーの体は碌に動けるものでは無くなっていた。 移動の際に誤って底部を尖った石に突き刺してしまい、殆ど動けなくなってしまったのだ。 まりさの帽子を地面に敷き、それを二匹がかりで引っ張るその姿は まるで人間が怪我人を担架で運ぶかの様。 あまりにも速度を失ったゆっくりプレイス探し。 だが、それもようやく終わろうとしていた。 「…ゆゆ?ぱちゅ!ここは…?」 「むきゅ…!そうね…皆、ここはきっと良いゆっくりプレイスになるわ…」 『ゆっくり』を嗅ぎつける勘に従って移動する事4日。 ようやく前のゆっくりプレイスにも劣らぬゆっくりプレイスを見つけ出した4匹。 川も近くにあり、柔らかい草も沢山生えており、近くに広場もある。 嬉しい事に4匹皆で暮らせそうな小さな洞窟まである。 何よりも4匹の勘が『ここはゆっくりプレイス』と教えている。 洞窟の事も考慮すれば、数日前に捨てたゆっくりプレイスよりも良い所かもしれない。 「でも…ぱちゅ、ここは…」 「………ゆっくり出来ないよ…」 だがそれは、近くに人間の家さえ無ければの話。 そのゆっくりプレイスから僅か100m足らずの所に人の民家らしき建物がある。 その上そこと洞窟との間には障害物も無く、 人が見ようと思えば自分達は丸見えである。 「ゆうう…こんなにゆっくり出来そうなのに…!」 「静かにしてれば気付かれずに暮らせないかしら…?」 「駄目だよ…!見つかっちゃったら 今度こそゆっくり出来なくなっちゃうかも…」 「…残念だけどここは駄目ね…他の所を… ゆ…いたぃ…!」 しかし、ぱちゅりー達の体力は限界を迎えつつある。 何しろあの群れから抜けてから4日間もの間ゆっくりしてないのだ。 4匹全ての体力、そしてゆっくり分は直ぐにでも枯渇しようとしていた。 「…ぱちゅ、人間が近くにいるけど 今日だけは静かにここでゆっくりしよう? このお家の中でゆっくりしてればきっと見つからないよ!」 「むっきゅ…」 『ゆっくりしたい』と言う本能から来る 『一晩でもここに留まりたい』と言う欲求。 しかし人間に対する恐怖もある。 その狭間でぱちゅりーは葛藤したが、 自分が余りにも足手まといになっていると言う自覚から 今回は僅差で本能が勝ったようで、ぱちゅりーはまりさのその言葉にゆっくりと頷いた。 「むきゅ…何か…何かゆっくり出来ないわ…」 しかしぱちゅりーは頷く瞬間、 周囲の雰囲気がゆっくり出来ないものに変わったのを感じ取った。 ゆっくりプレイスの中にいるのに何故かゆっくり出来ない。 何かゆっくり出来ない雰囲気がこの辺りに立ちこめている。 「ゆ…ゆ…」 ふとぱちゅりーがその顔を上げると3匹が皆、 ぱちゅりーの後ろを見て目を見開いている。 まるで人間の様に、とんでもなくゆっくり出来ないものがぱちゅりーの後ろにいるかの様に。 「…むきゅ?」 不思議に思ったぱちゅりーは深く考える事もせず、 ゆっくりと後ろへと振り返った。 「おい皆!!これゆっくりじゃねぇの!?」 「ああ?本当だ!?何でこんなトコに4匹もいんの?」 「 」 「 」 「 」 「 」 振り向いた先にいたのは人間の子供達が数人。 恐れていた人間にあっさりと見つかってしまった事で ぱちゅりー達の残り少ないゆっくり分は一瞬で無くなり、 4匹は仲良く揃って気を失った。 後編へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3021.html
ゆっくりを提供するもの PMUS描写無し ドスまりさが出てきます いじめ描写ほぼなし 「ドスの事はどう思っているんだい?」 男はゆっくりに尋ねた。 「どすはゆっくりできないどすだね!!」 「かってにすっきりー!!してあかちゃんうんじゃいけないっていうんだよ!!」 「ごはんもたべすぎちゃだめだっていうんだよ!!」 「ほかにも・・・(ry」 ゆっくりはドスに対する不満を男にぶちまけた。男はそれを熱心にメモしていた。 「・・・というわけなんだよ!!」 「そ〜かそ〜か」 ひとしきり愚痴を言い切ったのかゆっくりは満足したようだ。 「ぐちをきいてくれてありがとうおにいさん!!おかげでゆっくりできたよ!!」 「そうか。それは良かった」 この男は山にいるゆっくり達にアンケートを取っていた。内容は 『ドスについてどう思っているか?』 という事である。 大半がドスに対する不満ばかりであるが、中には 「すっきりがじゆうにできないのはすこしつらいけど、 すきかってにすっきりしまくるのはいなかもののすることよ!! とかいははあかちゃんのことまできちんとかんがえなくちゃいけないのよ!!」 「むきゅ!!みんないまはごはんがあるからってかんがえずにたべすぎなのよ!! もしあめがつづいたりしたらどうするつもりなのかしら? そういうことをかんがえられないゆっくりがどすをこまらせているのよ!!」 「みんなどすにもんくをいうくせにこまったときだけどすをたよりにしてるね!! おなじゆっくりとしてなさけないよ!!まったく、さいきんのわかいゆっくりは(ブツブツ」 一部の賢いゆっくりには好評な様である。 結果、ゆっくりの95%がドスに対して不満を持っている事が分かった。 すっきり制限や食事量制限などが主な要因である。 また、不満をもっているゆっくりにもう1つ質問をした。その内容は 『ドスの元から出ていかないのか?』 というものである。 すると実に9割のゆっくりが「出て行かない」と答えたのだ。 理由は簡単。安全だからである。 通常のゆっくりは非常に弱く常に食われる側であるが、ドスはそうではない。 体も大きく力も強く、そして何よりドススパークやゆっくりオーラなどの強力な技を持っている。 そのドスの元にいれば捕食者から狙われる事もなく、安全に過ごせるからである。 ドスの元で安全に過ごすゆっくり達は、最初の内はドスの加護に感謝していたが それが日常となり、平和に「慣れて」しまったせいで増長するゆっくりも少なくなかった。 その増長したゆっくり達が人間の生活圏に入り悪さをする事も増えた。 ドスは気が気ではなかった。このままゆっくり達が悪さを繰り返せば、人間達は必ずゆっくりを討伐しにくる。 単純な力ならば並の人間よりドスのほうが遥かに強い。その為、素手の人間ならばさほど問題にならない。 しかしドスを相手に素手で挑む人間はいない。それなりの装備をしてくるものだ。 仮にそれなりの装備でなくとも、人間はそれこそ適当な木の棒や石で武装するだけでもドスにとって脅威である。 討伐ともなればそれなりの装備をした人間が大量に押し寄せてくる。 そうなってはドスも並のゆっくりと変わらず、あっさりと群れごと滅ぼされるだけである。 そうならない為にゆっくり達に口煩く人間の里に行くなとは言ってはいるが、 人間の作った野菜や菓子などの食糧は、ゆっくりにとっては極上の美味であり、 その味を覚えたゆっくり達がドスの言う事など聞く耳を持たなかった。 その結果として生活圏を荒らされた人間は、ゆっくりを見つけたら即殺すという行動を取るまでに至った。 人間にとっては善良であろうと悪質であろうと、ゆっくりであれば関係無いのである。 このままではいずれ必ず人間が討伐に来る。どうすれば討伐されずに済むかドスは悩んでいた。 協定を結ぶ事も考えたが、ゆっくり達が協定を守れるかも怪しく尚且つ協定を結んでも人間にあまりメリットが無い。 それならばドスと側近のゆっくりだけで群れを出るのはどうかとも考えた。 そうすればドス達だけは一応無事に過せるかもしれない。しかし、他のゆっくり達はどうなるだろうか? ドスが居なくなった事で、今まで我慢していたゆっくり達が一気に人間の生活圏に侵入するだろう。 そうして人間の怒りを買い、ゆっくり達は1匹残らず皆殺しにされるであろう。 愚かなゆっくりが皆殺しにされるのは構わなかったが、人間に迷惑が掛かるというのは避けたかった。 どうすれば良いのかと悩んでいたドスの元に 「ゆゆぅぅ〜〜〜〜!!どすぅぅ〜〜〜!!どすぅぅぅ〜〜〜!!!!」 「ゆっ!?どうしたの?れいむ!!」 「ゆっくりぷれいすににんげんさんがきたよぉぉぉお!!!」 「えっ!?!人間が来たの!?」 ドスは焦った。遂に人間が討伐に来たのかと思った。しかし 「にんげんさんはどすにあいたいっていってたよ!!」 「えっ!?」 ドスは取り合えず安心した。どうやら討伐に来たのではないらしい。 では何の為に?とも思ったが考えてもしょうがないので人間に会って見る事にした。 人間は小さな岩に腰掛けてドスを待っていた。ゆっくり達はその人間の様子を不安げに見つめていた。 と、そこへドスが現れた。 「人間さん。まりさのゆっくりプレイスにようこそ!!ゆっくりしていってね!!」 「あぁこちらこそ。ゆっくりしていくよ!」 ドスの挨拶に対して人間は悪くない反応を示した。どうやら争う気は無いらしい。 「人間さん。今日はまりさに何の用なの?」 ドスは尋ねた。 「まりさと今後の事について2人きりで話がしたい。いかがかな?」 ドスは何となく理解した。ここで人間の要求を蹴ったり問題を起こしたりすればロクな結果にならない。 そこでドスは要求通り人間と2人きりの話に応じる事にした。 ドスはゆっくり達に近づかない様念を押した。多分ゆっくりの今後に関わる話なのだろうとドスは考えた。 ドスと人間は回りに何もない草原に出た。ここならば誰にも邪魔をされる事はない。 「それで人間さん。まりさに何の用なの?」 ドスは尋ねた。 「ドスをやっているまりさに聞きたい事があってね。それで来たんだよ」 「ゆ?聞きたいこと・・・?」 「何、簡単な事さ。まりさ!!君はゆっくりできているかい?」 人間はドスに質問を投げかけた。大した質問ではなかった。が 「まりさは・・・まりさは・・・・・・・・」 ドスは言葉に詰まってしまった。「ゆっくりしているよ!!」と返すつもりだったのだが、言葉が出なかった。 ドスは自分がゆっくりしているとは正直思っていなかったからである。 「周りには誰もいないんだ。正直に言ってくれて構わない。」 「まりさは・・・ゆっくりできてないよ・・・」 ドスは俯きながら答えた。 「本当はまりさだってゆっくりしたいよ。まりさはみんなとゆっくりできるだけでいいんだよ・・・ でもみんながゆっくりするとまりさがゆっくり出来ないんだよ・・・ まりさだけなら我慢するけど、なんでみんなは自分だけゆっくりしようとするのかな・・・? そのせいでみんなゆっくりできなくなるのにね。何でみんな分かってくれないんだろう・・・ まりさも、みんなも、人間さんも、みんなでゆっくりしようと考えてくれればね・・・」 ドスは少し悲しそうな表情で男を見つめた。 「それが聞きたかった・・・ありがとう。」 「ゆっ?」 ドスは人間の意図が分からなかった。 「最近山のゆっくり達にまりさの事を聞いて回ったんだが、まりさの言ってる事が分かるよ。 君が苦労して群れの事を考えていても、あいつらはそれを当然と考えているからな。 むしろ自分達が問題を起こしても、まりさに押し付ければそれでいいって感覚だからなぁ・・・」 「ゆぅ・・・」 まさに人間の言った通りだった。ゆっくり達はドスに厄介ごとを持ってきては、自分達だけゆっくりしていたのだ。 「ただ、私達人間ならまりさをゆっくりさせてやる事はできるぞ。」 「ゆゆっ?!?!」 ドスは驚きの表情を浮かべた。 「人間さん!!何を言ってるの!?」 「言葉の通りだよ。それともまりさはゆっくりしたくないのか?」 「まりさは・・・まりさは・・・ゆっくりしたいよ!!もういい加減疲れたよ!!」 「そうなのか。」 「それで人間さん、どうすればまりさはゆっくり出来る様になるの? まりさは何をすればいいの?」 「あぁ、それはだな・・・・」 30分程して人間とドスが戻ってきた。 「ゆっ!!どすとにんげんさんがもどってきたよ!!」 「どす!!おかえりなさい!!」 「ただいま、みんな!!」 ゆっくり達は戻ってきたドスに声を掛ける。 暢気なゆっくり達といえど、ドスが人間と2人きりになるのは少々不安だったらしい。 「やぁみんな!!悪かったね!!もうまりさとの大事なお話は終わったから帰るよ。 じゃあまりさ、明日のこの時間にまた来るからその時に返事を聞くよ。 それじゃあ、良い返事を期待しているよ!!」 人間はそう言ってゆっくりプレイスから去っていった。 一方ドスも、ゆっくり達を適当にあしらって巣に戻っていった。 ドスは巣の奥に篭り、ゆっくりと考えた・・・。 次の日、ドスはゆっくりプレイスの入り口で人間を待った。 前日とほぼ同じ時間に人間が現れた。 ドスは手短に伝えた。 「人間さん、まりさは乗る事にしたよ。」 「そうか!!良い返事をありがとう!!それじゃいつ頃にするつもりだい?」 「一週間後位はどう?都合は人間さんに合わせるよ。」 「OKそれでいこう。んじゃ、また一週間後に!!」 「またね!!人間さん!!」 前回とは打って変わってあっさりとした内容で、すぐに話も終わった為他のゆっくり達は大して気にもしなかった。 一週間後、ドスはゆっくり達を集めてこう言った。 「これから人間の里をまりさ達のゆっくりプレイスにしに行くよ!!」 ゆっくり達は驚いた。今まではドスが人間と関わるなと五月蝿く言っていたからである。 ドスがやっと重い腰を上げたと、ゆっくり達は喜んだ。 「どすがいればにんげんのさとものっとれるね!!」 「にんげんなんてどすにかかればいちころなんだぜ!!」 「さすがどす!!たよりになるよ!!」 「それじゃあみんなで行くよ!!」 「「「「「えいえいゆー!!!」」」」」 ドスとゆっくり達は人間の里を目指して山を下った。 人間の里はゆっくりの足で30分程掛かるが、人間の里が手に入ると思っているので全く問題ではなかった。 暫くすると白く大きな建物が見えてきた。間違いなく人間の建てたものであった。 ドスとゆっくり達はその建物へと向かった。 程なくその建物に到着したゆっくり達は、その建物の大きさや頑丈そうな見た目からすぐにその建物を気に入った。 その為手始めにその建物をゆっくりプレイスにすることにした。 幸い扉等は見当たらず、すんなり入る事ができるので、ゆっくり達は次々とその建物に入っていった。 「ここはすごくゆっくりできるおうちだね!!にんげんにはもったいないね!!」 こんな事をゆっくり達は言っていた。 一方ドスは、いつまで経ってもその建物に入ろうとはしなかった。 「ゆゆっ!?どす!!どうしたの?ここはとてもゆっくりできるよ!!」 「まりさはみんなが入るまで入り口を見張ってるよ!!まりさが見張ってれば人間が来ても大丈夫だよ!!」 「ゆっ!!それもそうだね!!」 ドスは入り口を見張る事にした。それに安心したゆっくり達は尚も建物に入っていく。 暫くすると全てのゆっくりが建物に入った。 それを見計らってドスは叫んだ。 「人間さん!!もういいよーーー!!!」 ドスが大声を上げた瞬間、建物の天井から金網タイプのシャッターが下りた。 「ゆゆゆっ!?!?」 ガシャン!!という音にゆっくり達が驚いた。 ゆっくり達は金網のシャッターで閉じ込められてしまったのだ。 思わずドスに助けを求めたゆっくり達だったが、ドスは笑みを浮かべていた。 「ゆゆっ!?どすどうしたの!?はやくたすけてよ!!」 ドスは助けを求めるゆっくり達の声を聞いている内に、俯いて震えだした。 「・・・・・・・・・・・・・・」 「どすなにしてるの!?ゆっくりできないがしゃーんをはやくこわしてね!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「どすどうしたの!?ねちゃったの!?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ!!」 「あははははははははははは!!!!はーーーーーーはっはっはっはっは!!!!」 ドスは突然大声で笑い出した。 その声に反応したかの様に、何処からともなく人間が集まってきた。 「ゆっ!!どす!!にんげんがきたんだぜ!!」 「はやくやっつけてよ!!」 一方ドスは 「ははははははは!!・・・・はひぃ・・・はひぃ・・・ぜぇー・・・ぜぇー・・・」 漸く笑いが止まった様だ。 笑いすぎて半泣きになりながらドスは言った。 「まだ分からないの?お前達はまりさに騙されたんだよ!!」 「ゆっ!?なにをいってるの!?!?」 ゆっくり達は混乱した。あまりの展開に頭が付いていけなかった。 「お前達をゆっくりさせるのがもう嫌になったんだよ!!もうお前達のお守りなんてたくさんだよ!! だからお前達は加工所でゆっくりしていってね!!」 「むきゅっ!!どす!!あなたはにんげんにだまされているのよ!!」 「おねがいだからかんがえなおしてね!!」 「かこうじょじゃゆっくりできなぃぃぃぃい!!!!」 ゆっくり達はドスが人間に騙されてこんな事をしたのだと思った。 ゆっくりの中には説得を試みたものも居たが無駄であった。 「人間さんに協力すればまりさをゆっくりさせてくれるって約束してくれたよ。 もしかしたらゆっくりできないかもしれない・・・でも・・・」 まりさは一呼吸置き、そして 「お前達クズと一緒に居ると、まりさは絶対にゆっくりできないんだよ!!」 「「「「ゆがーん!!!」」」」 「どすがゆっくりをゆっくりさせるのはあたりまえでしょお!!」 「うらぎりもののどすはしねぇええええ!!!」 「れいむのかわいいあかちゃんみせてあげたでしょぉぉお!!」 「じょうずなおうたきかせてあげたでしょおおおお!!」 「ゆっくりしないばかなどすはしねえええ!!」 ゆっくり達は騒ぎ出した。 ゆっくり達の騒ぐ声にドスは段々とイラついてきたらしい。 側に居る人間に一言二言話しかけ、その人間の方に口から何かを吐き出した。 「人間さん、まりさのスパークキノコ預かっていてね。このままだと我慢できないから・・・。」 「あ、あぁ・・・分かった。」 ドスはゆっくり達の方に向き直り、怒鳴り散らした。 「ドスがゆっくりさせるのはあたりまえって、それはそうかもしれない・・・。 まりさはお前達をゆっくりさせる為に頑張ってきた。でもお前達は何をしてくれた!? お前達は好き勝手にゆっくりするせいで、まりさは凄く迷惑だったんだよ!! まりさだけならまだいいけど、里の人間さんにまで迷惑を掛けるって何のつもり!? お野菜は勝手に生えないって何度も言ったでしょ!?それを理解できないから人間さんに殺されるんだよ!! お前達が迷惑を掛けすぎたせいで、山のゆっくりみんなが殺されるかもしれなくなってたんだよ!! 人間さんはまりさよりずっと強くて賢いんだよ!!それなのに何で勝てるって思っちゃうの!? そんな事だからまりさにも見放されてこうなるんだよ!!」 ドスはゆっくりとは思えない口調でまくし立てた。 「あかちゃん見たらゆっくりできるでしょって、ただお前達が勝手にすっきりしただけでしょ!? それで勝手にできた子供なんて可愛くも何ともないよ!!お前達クソ饅頭のクソガキなんてムカツクだけなんだよ!! じょうずな歌を聞かせたって、ただゆ〜ゆ〜騒いでるだけでしょ!!あんなのただの雑音だよ!! 人が眠い時までさわきがやって!!おかげでこっちはゆっくり寝ることもできなかったよ!! 黙らせたら黙らせたで泣き叫んで五月蝿くなるしほんとにお前達はうざいよ!!! お前達は人間さんにさっさと殺されてね!!お前達みたいなゴミクズでも人間さんの役に立てるんだから 光栄に思ってね!!」 ゆっくり達はショックで固まっていた。自分達にとってのゆっくりを、よりによってドスに全否定された為である。 「それじゃあ最後にみんなに言いたい事があるよ!!」 ドスは先ほどと打って変わって落ち着いた口調で話した。 「それじゃあみんな!!ゆっくり・・・・・しね!!」 満面の笑みを浮かべたドスによる死刑宣告である。 「ゆぎゃぁあああああ!!!ぢにだぐないぃぃぃぃぃいい!!!」 「ぶざげるな゙どずぅぅぅうぅぅぅぅううう!!」 「ごのうらぎりものぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」 「どずぅぅぅうう!!ゆっぐりじないでだずげでーーー!!!」 ゆっくり達は大騒ぎしているがドスは何処吹く風といったところである。 そうしている内に加工所入り口のゲートが閉まり、ゆっくり達も見えなくなった。 「今更聞くまでもないが、良かったのか?」 「これでやっとゆっくりできるよ。何だか今はすごくすっきりー!!な気分だね。」 長い間のストレスから開放されたドスは、非常にゆっくりとしていた。 「まりさ、これから先もゆっくり達が集まってくるだろうがそれがクズ共だったら遠慮せず連れて来てくれ!! それなりのお礼はするぞ!!」 「うん分かったよ!!まぁクズだったらだけどね。」 ゆっくり達はドスに守ってもらおうとする習性がある。クズゆっくりであればなお更で、ドスの名の下に悪さを働く。 そこで人間はクズゆっくりを駆除するのではなく、ドスを懐柔してしまえば良いのでは?と考えた。 懐柔できるようなドスを調べるのはさほど難しいものではなかった。 ゆっくりの事はゆっくりに聞けば良いのだ。 ゆっくりしていないドスならば更に詳しく調べたうえで、懐柔できそうなドスは直接人間が説得に行く。 説得できてしまえばこっちのものである。 最小限の人数でクズゆっくりを駆除できる。その上危険なドスも敵になる事はない。 ドスは邪魔なクズゆっくりを処分でき、人間は殆ど手間なく大量のゆっくりを確保できる。 人間にとってもドスにとってもお互いが「ゆっくり」の提供者となるのだ。 「どす!!どすのむれにいれてほしいんだぜ!!」 暫くするとまたゆっくり達が集まってきた。またクズかと思いつつも、ドスはゆっくり達を歓迎した。 「まりさのゆっくりプレイスにようこそ!!歓迎するよ!!」 「(もうそろそろ良い頃だね・・・)」 「これから人間の里をゆっくりプレイスにするよ!!!!!・・・・・ 終 悩むドスの絵を見て考えてみました。 ゆっくりを売り渡す様ドスを説得するのはどうなんだろうと思い書いてみました。 内容はほぼ丸パクリっぽいなぁこれ・・・ 精進します(;´Д`)